4つの部位で“体の声”を聞く「聴診器」で手軽に健康維持

使い方は簡単
使い方は簡単

 病気は早期発見・早期治療が大切だ。日頃から体の異変を見逃さず、「おかしいな」と感じたら早めに医師に診てもらえば、大病を防ぐこともできる。それには、「聴診器」が役に立つ。

 医者にかかったとき、聴診器を胸に当てられて診察を受けた経験が誰にでもあるだろう。聴診器は、臨床の現場で心臓、肺、血管などの音を聞くために使われている。「体の声」に耳を傾けていれば、異常を発見できるのだ。江田クリニック院長の江田証氏は言う。

「そもそも聴診器は、子供が筒状の木の棒の片端に耳を当て、もう一方の端を引っかいて大きくなる音を聞いて遊んでいる姿を見て、フランスの医師が発明したものです。医療従事者でなくても、その効果を十分に活用できます。普段から聴診器で正常な状態の体の音を聞き慣れておけば、何か異常があるときは変化が分かります。レントゲンなどのように被曝の心配もなく、使い方を誤っても危険はありません。誰でも手軽に体内の情報をたくさん得ることができるのです」

 普段から聴診器を使って体の音をチェックしておきたい4つの部位について詳しく聞いた。

■首

 首の両側に走っている内頚動脈に聴診器を当てて音を聞く。

「とくに問題がない場合は『ドクンドクン』という血液が運ばれる拍動音が聞こえます。しかし、動脈硬化が進んで血管が細くなり、詰まりかけていると『シューシュー』という音がします。血液が流れにくくなっているのです。動脈硬化によって血管が細くなると血管が詰まり、脳梗塞のリスクがアップします。聴診器で狭窄を早期発見できれば、脳梗塞を防ぐことができるのです」

■胸の上部(肺)

 両胸の乳頭の少し上の位置に聴診器を当て、大きく呼吸をしながらそれぞれ音を聞く。

「呼吸音=肺の音を確認できます。喘息の発作が始まると、息を吸った時は『ヒューヒュー』という高音、息を吐き終わる時は『ブーブー』という低音が聞こえます。また、心不全で肺水腫を起こしていると、呼吸した時に水が『ボコボコ』したような音が聞こえます。特に心臓や肺の持病がある人には有用です」

■左胸(心臓)

 左の乳頭付近に聴診器を当てて音を聞く。

「日頃から自分の鼓動のリズムを聞き慣れておくことが大切です。リズムが頻繁に乱れる場合は不整脈が疑われます。不整脈の一種である心房細動は、鼓動のリズムが乱れることで心臓内の血液がよどみ、血栓ができやすくなります。その血栓が脳に飛ぶと脳梗塞を起こすので注意が必要です。鼓動のリズムが乱れることを把握できるだけでも、受診するタイミングを逃さずにすみます。また、弁膜症などで血液の逆流が起こると、『シューシュー』『ダーッダーッ』といったような心雑音が聞こえます。家族の音と比べてみましょう」

■お腹(胃腸)

 へその少し上に聴診器を当て、30秒ほど胃腸の音を聞く。

「胃腸は、食べ物を消化、吸収、排泄するために蠕動運動を行っています。問題がなければ、『ゴロゴロ』した音が10~20秒おきに聞こえますが、吸収しづらい物を食べたときはゴロゴロという音が多くなります。また、麻痺性の腸閉塞を起こした場合はまったく音はしなくなり、腸が詰まったりねじれたりする腸閉塞では『キンキン』という金属性雑音がします」

 正確に病気を見極めるのは難しいが、体の音のちょっとした変化で疑問があれば医師に相談すればいい。

「普段から自分の体の音を聞いていると、異変を察知できるだけでなく、自律神経が安定して気持ちが落ち着くようになります。赤ちゃんが母親に抱かれて鼓動を聞いていると眠くなるのと同じです。聴診器を枕元に置いておき、寝る前にそれぞれ30秒ほど『体の声』を聞いてみるのがおすすめです」

 聴診器はホームセンターやネット通販で1000円程度から購入できる。家庭に常備して、健康維持に活用したい。

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