がんの治療は長年、「手術」「放射線治療」「薬物療法(抗がん剤)」とされてきましたが、ここ1、2年でこれに「免疫療法」が加わって4本柱になりました。
先日、ある病院で医師たちがカルテを見ながら、がん患者の治療法について検討していました。この時、免疫治療薬のニボルマブを5回投与された肺がん患者(67歳・女性)のCT画像を目にしました。左肺へのがん転移は最大径4センチほどの腫瘤でしたが、これがほとんど消えているのです。
私は肺がんでこれほどの効果を見たのは初めてでした。副作用においてはまだまだとても問題のある薬剤ですが、もしかして薬物でがんが治る時代が近いのかもしれないとも感じました。
■整備を急いで欲しい
2017年度から6年間の「第3期がん対策推進基本計画」が示されています。この中で主な項目を見てみると、まず「ゲノム医療の推進」をうたっており、がんの遺伝情報などにより個々の患者の最適な治療法の選択がもっと進むものと思います。つまり、ゲノム医療の進展によって、個々の患者に投与される薬物はより効く確率が高く、副作用は少ないものが選ばれるようになるということなのです。
また、この推進基本計画では「15歳~39歳(AYA世代)のがん患者は多くの問題を抱えている」ことを指摘しています。この世代は、学業の継続、就職、結婚、出産、子育てなど大変な時期でもあります。診療、相談などを支援する制度においては恵まれていない世代であることから、ぜひこれらの整備を急いで欲しいと思います。
先日、がんに関係したある会合でがん医療体制の話になった時、「病院では早期退院を勧める」「住み慣れた環境で過ごす」といった在宅医療に向けての意見が多く出ました。2025年には後期高齢者数は2100万人を超えるといわれ、膨らむ医療費、病室が足りなくなるなどのことから、がん患者は入院ではなく在宅へシフトすることはやむにやまれぬ対応だという意見でした。
しかし、一方では高齢で独居のがん患者がさらに増え、2人世帯でも老老介護が多くなっています。訪問看護師、往診の医師が来てくれても、ヘルパーさんが来てくれても、進行したがんで動けない独居の患者を在宅で24時間だれが世話をするのだろうかと心配されます。がん対策推進基本計画の全体目標の中で「がん患者が、いつでも、どこに居ても、尊厳を持って安心して生活し、自分らしく生きることのできる地域共生社会を実現する」とあります。がんで動けなくなって、独居で、在宅を勧められ、あるいは在宅を強いられ、それでも「安心して自分らしく生きる」とは? と考えてしまいます。無理のない在宅であって欲しいと思います。
会合が終わり自宅に帰ると、がん患者会の通信が届いていました。
「人は、死にたい気持ちを抱える時、絶望的な孤独の中にいます。その時に、あたたかな気持ちでそっとそばに居てくれる存在は、抱えきれない苦悩で凍りついた心をやわらかく溶かしてくれる木漏れ日のようなものです。『心の居場所』づくりとは、私たちの心の底からやさしさを提供することにほかなりません」(竹本了悟 がん患者・家族語らいの会通信 №186 2017年9月9日発行から)
そんな文章が載っていて、「心の居場所づくり」という言葉にとてもひかれました。
2018年は戌年です。犬は人の吐く息や尿で、がんを嗅ぎ分けることが出来る能力があるといわれています。一流医学雑誌「ランセット」に掲載された話で、すでに検討に入った施設があると聞きました。愛犬ががんを探知してくれるようになったらすごいことです。
新しい年です。1年間、元気で過ごされることを祈ります。一生懸命、応援しております。
がんと向き合い生きていく