医者も知らない医学の新常識

インフルエンザワクチンを打つと免疫が低下する?

毎年打たないと効果が持続しない
毎年打たないと効果が持続しない(C)共同通信社

 インフルエンザが本格的に流行する季節となりました。皆さんはもうワクチンを打ちましたか? ワクチンは科学的にその効果が確認されている、インフルエンザの予防法です。ただ、今使用されているワクチンはスプリットワクチンといって、実際にインフルエンザにかかった時に体がつくる免疫と比べると、その効き目は弱いものなので、毎年打たないと効果が持続しません。

 2009年の「新型インフルエンザ」騒動の時に、「毎年ワクチンを打っていると、新型インフルエンザにかかりやすくなるのではないか」という意見が、まことしやかに広がったことがありました。これは必ずしも事実無根ではなくて、動物の実験や免疫不全のお子さんでは、インフルエンザワクチンを繰り返し接種すると、細胞性免疫という体の免疫の一部が、弱まることが報告されているのです。これは免疫不全のお子さん以外にも、成り立つことなのでしょうか? 昨年の感染症の専門誌に、この疑問に答える論文が掲載されました。

 それによると2009年の「新型インフルエンザ」に対するワクチンを免疫に異常のない人に繰り返し接種すると、細胞性免疫も活性化することが確認されています。その仕組みはまだ不明ですが、インフルエンザワクチンを打つと新型インフルエンザにかかりやすい、というのは間違った考え方であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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