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米国で増加中 地肌クーリングで抗がん剤治療の副作用軽減

(C)PIXTA

 今年、普及するのではないかとみられているのが化学療法(抗がん剤治療)を受ける患者のための「地肌クーリングシステム」です。

 化学療法の最大の副作用のひとつが脱毛です。医療技術が進歩してもなかなか解決されない問題として、長年患者を悩ませてきました。それを解消するのが、このシステム。最も信頼度が高い情報源として知られる「クリーブランドクリニック・2018年のブレークスルー」のひとつに選ばれたことで、にわかに注目を集めています。

 化学療法の前後に、フリーザーに接続された非常に低温の帽子をかぶります。これで地肌を冷やすと血流が滞り、薬が毛包に届きにくくなります。新陳代謝を下げる作用もあり、毛包へのインパクトが減ります。

 ヨーロッパではすでに浸透しており、アメリカでも過去2年間で2社の製品が米食品医薬品局により認可されました。薬品の種類によっては効果がない場合もあるとのことですが、使った患者にはおおむね好評で、大都市を中心に設置する病院が少しずつ増えています。

 とはいえ、まだまだ数が少ないのと、継続して使わなければならないにもかかわらず保険が適用されないことから、誰でも使える状況には程遠いといえます。1回のトリートメント費用は400ドル(約4万4000円)と高額で、がん治療費だけで精いっぱいの患者はとても手を出せないのです。

 もう少し安いオプションとして、フリーザー接続でなくマニュアルで冷やして使う帽子もあります。登場したのは10年ほど前ですが、まだ米食品医薬品局の認可は下りておらず、患者が業者から直接レンタルする仕組みになっています。料金は月400ドルで、フリーザー接続1回分と同じです。

 気軽に利用できる環境づくりに大きな期待がかかっています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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