独白 愉快な“病人”たち

脳が視力調整 田中公平さん「白内障」手術後のメガネ問題

作曲家の田中公平さん
作曲家の田中公平さん(C)日刊ゲンダイ

「白内障」は、手術よりもその前後のメガネ作りのほうが大変でした。これから白内障手術をする方は、術後1~2カ月してからメガネを作ったほうがいいですよ。私はすぐに作って失敗しました(笑い)。

 手術をしたのは2013年の初夏です。その10年ぐらい前から視力が落ちている感じはありました。年齢でいえば40代後半から50代後半にかけての頃、パソコンを使っているとなんとなく膜が張った感じになっていくんですよ。

 そもそも近視だったところに老眼も加わっていた時期で、近視用と遠視用のメガネをいちいち掛け替えていました。遠近両用っていうのはなんだか気持ち悪くて(笑い)。そのうち、近視のメガネをしていても近くがぼやけることが多くなったんです。パソコンの文字も大きくしないといけないようになって、「これはいかんな」と思ったのが50代半ばです。

 街の眼科を受診すると、「緑内障と、右目には白内障がある」と言われました。緑内障に対しては、それ以来、眼圧を下げる点眼薬をさすようになり、おかげさまで悪くならずにとどまっています。ただ、白内障には薬がないので経過観察でした。そして59歳になったとき、眼科医から「そろそろどうですか?」と手術を勧められたわけです。

■裸眼への憧れは泣く泣く諦めた

 手術は、その眼科から紹介された慶応大学病院で行いました。白く濁った水晶体を吸い取って、新しいレンズを入れる手術です。視力は入れるレンズによっていくらでも良くできるということでしたが、もともと0.07の視力しかない私には、「2.0は絶対ダメ」と言われました。急にそんなに見えるようになると脳が混乱するので、「0.3ぐらいがベスト」とのことでした。少しは裸眼への希望や憧れもあったのですが、「1.0でも強すぎる」と言われ、泣く泣く諦めました(笑い)。

 手術そのものは15~20分ぐらいでした。麻酔の点眼をされて右目のところだけ開いた布をかぶせられ、瞼が閉じないように絆創膏でガッチリと留められました。目の前にナイフが迫ってきても目をつぶれない状態です。でも、実際は明るい光が当てられてまぶしくて真っ白。

 何も見えないので、眼球にメスが入る瞬間の恐怖なんてものはありません。軽い音楽が流れる手術室で痛くもかゆくもなく手術は終わり、目に何かをかぶせられて、別室で30分ぐらい休んだら眼帯のきついやつを装着して、もう帰宅です。

 帰宅後は、傷口にバイ菌が入らないように、1カ月ぐらいは洗髪も洗顔も禁止。1週間はきつい眼帯の“片目生活”で、その後の2週間ぐらいは緩い眼帯生活でした。髪も顔も洗えないのがちょっと嫌でしたが、つらいのはそのくらい。目が見えづらかった手術前の生活のほうがよほどつらかったので、白内障の手術を躊躇されている方には、すぐ受けることをお勧めします。

■すぐにメガネを作って大失敗

 今の視力は裸眼で左0.1、右0.3。メガネを掛けて1.5と1.2ぐらいで、本当に快適です。ただ、何度も言いますが、すぐにメガネを作ると失敗します。

 私も医師に「メガネは1カ月後ぐらいがいいですよ」と言われていたんです。でも、今までのメガネでは当然合いません。仕事ができないと困るので、すぐに右目だけレンズを替えたのです。すると、今度は左目のレンズも合わなくなってきました。つまり、視力が変わった右目に合わせて脳が勝手に調整するんですよ。脳はすごいんです。

 そういう脳の調整が落ち着くまで1~2カ月かかるので、その間はフラフラしたり、少し酔う感じもありました。でも、見え方は格段にクリアになります。

 手術前は近視がどんどん進んで、メガネの右目のレンズだけ頻繁に替えていました。しまいには3カ月に1度のペースでね。術後も、近視用のメガネは全部作り替えなければならず、こだわりのレンズなので、かなりの出費になりました。

 術後は、手術した慶応大学病院に1度だけ検診に行き、後はいつもの眼科に3カ月に1度通っています。入れたレンズの具合や左目の状態も毎回診てもらっていて、「とてもきれい」と言われています。

 健康面で気を使っているのは食生活です。それは白内障になる前からですが、無農薬や無添加は家族みんなでこだわっています。飲料水はもちろん食器洗いもウオーターサーバーの水ですし、雨の日は特に水道水にいろんなものが混ざっている気がするので、お風呂には入りません(笑い)。

 やはり「食」はすべての基本です。美しい音楽を作ることにも無関係ではないはず。「手軽さに甘えて体に良くないものばかり食べている人間に負けるわけがない!」というのが密かな持論です。

▽たなか・こうへい 1954年、大阪府生まれ。東京芸術大学卒後、会社員を経て米国バークリー音楽学院に留学。帰国後に作・編曲家活動を始め、人気アニメ「ワンピース」のオープニング曲や「サクラ大戦」シリーズなど数々の音楽を手掛けて高い評価を得る。近作に、アニメ100周年アニバーサリーソング「翼を持つ者~NotanangelJustadreamer~」がある。

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