末期がんからの生還者たち

慢性骨髄性白血病<3>「治療法を変えるのは命がけの選択と同じ」

久田邦博さん
久田邦博さん(C)日刊ゲンダイ

 血液のがんと言われる「白血病」は、血液の中を流れる白血球の数値が、異常に高くなる病気だ。

 平均基準値は成人なら4000~9000(個/マイクロリットル)で、WHO(世界保健機関)では、リンパ系、急性、骨髄異形など症候によって数種類に分類している。

 5年生存率は50%といわれるが、白血球の数値が3万に近かった久田邦博さん(54=愛知県名古屋市在)は、2001年8月、「慢性骨髄性白血病」と診断された。

 選択した治療法は、毎日、自分で注射する「インターフェロン」である。7カ月間続け、210本のインターフェロンを打ち続けた。

 大手医薬品メーカーに勤務し、課長職の要職にもあった久田さんは転勤族である。翌年、神奈川県横浜市の勤務地から愛知県名古屋市の支店に転勤し、職場もMR(医薬品情報担当者)から、社内研修の担当に異動した。

「この頃から慢性骨髄性白血病の新薬に『グリベック』が出ていることを知っており、治療法を注射からこの経口薬に変えようと思いました」

 薬学部を卒業し、薬剤師の資格も持ち、病気や薬剤にはめっぽう明るい。

「ただね、患者にとって、治療法を変えるということは、大げさに言うと命がけで選択するようなものなのです」

 スイスの大手薬品メーカー「ノバルティス」が開発した「グリベック」は、的を絞って攻撃し、正常な細胞は攻撃しないという分子標的薬である。

 久田さんはこの薬を毎日4錠、今日までの15年間飲み続けている。医薬品の支払いは3カ月分で3割負担の約28万円である。

■インターフェロンから分子標的薬「グリベック」に

 17年前、約3万の数値を示し、担当医を驚かせた「白血球」は現在、4000の正常値にまで低下した。

「もう病気を考えると気がめいりますから、病気のことは忘れて治ったかのように過ごしています。死ぬまで生きているのだから、思いっきり充実させてやる! という気持ちでいますね」

 薬剤の副作用もある。疲労感、下痢、皮膚掻痒などだ。

「疲労感は意識をしないように努めました。この状態が普通だと考えて忘れるようにしています。ただ、睡眠だけはしっかりと取っていますね。下痢は整腸剤でコントロールし、皮膚掻痒感は、かゆみ止めのクリームを使用しています」

 38歳で「白血病」と告知されたとき、久田さんには、10歳を頭に、男ばかり4人の子どもがいた。

 子どもたちには、「白血病」であることを隠していた。

 長男が20歳を迎えたとき、「実は……」と打ち明けたところ、「今さら言うなよ!」と、どうとでも受け止められる返事が返ってきたという。

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