無理なく始められる “正月脂肪肝”を解消する食事と運動

できれば毎日30分以上続けてウォーキングを
できれば毎日30分以上続けてウォーキングを(C)日刊ゲンダイ

 正月を家飲みとゴロ寝で過ごして「体が重い」と感じている人も多いのではないか。そんな人に注意したいのが肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」。放っておくと肝臓の機能が悪化して動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞などの心疾患や糖尿病などの深刻な病気も誘発する。どうすれば解消できるのか? 総合内科専門医で松尾内科クリニック(東京・桜新町)の松尾孝俊院長に聞いた。

 脂肪肝とは、食べ過ぎや運動不足で余った糖質や脂質が中性脂肪に変わり、脂肪が肝臓全体の30%以上を占める状態をいう。見た目がスリムな人にも見られ、たった2~3キロ体重が増えただけで肝臓に脂肪がたまる可能性がある。

「脂肪がたまっているだけの軽度の脂肪肝なら、食事と運動だけで解消できますが、放置して脂肪肝に炎症が伴うようになると、そうはいきません」

 体のなかで消費しきれないエネルギーは体の中にため込まれる。具体的には肝細胞に中性脂肪がたまって風船化。やがて細胞死を起こす。その後始末に貪食細胞などが集まってきて炎症が起きて脂肪肝炎を発症する。

「そうなると、肝臓の線維化が進み、肝硬変や肝がんを発症したり、肝機能低下から動脈硬化が進み、狭心症や心筋梗塞となったりします。さらに全身でインスリン抵抗性が高まり、高血糖や高血圧になる恐れがあります。だからこそ、できるだけ早く脂肪肝を解消する努力が必要なのです」

■手始めに就寝3時間前には一切食べない

 では、脂肪肝を解消するにはどうしたらいいのか? まずは食事だ。

「軽い脂肪肝なら体重を2~3キロ落とせば解消できます。まずは1カ月で1キロの減量を目標とした食事制限をはじめることです。そのために3つのことに気をつけましょう。1つ目は寝る前3時間は一切食べないこと。その習慣がない人はこれを徹底するだけでやせます」

 簡単なように聞こえるが、いざ実行しようとすると、習慣で食べたくなる。そんなときは「本当にいま食べたいのか」を自問し、10分間がまんする。大抵の空腹感はこれで解消する。

「どうしてもお腹が減ったら低カロリーの○○を食べるといい、という話を聞きますが、夕食後に食べる人はエネルギー不足が理由ではありません。習慣で食べているだけです。2週間くらいは断固として食べない。そうすれば、食べたくなくなります」

 2つ目は夕食で糖質を取り過ぎないことだ。

「糖質も必要だから取っているわけではなく、糖質中毒になっているから食べるのです。不必要な糖質は脂肪細胞にため込まれて、結果、体重が増えて脂肪肝をつくり出します。これを解消するには夕食だけでいいから糖質を抑える必要があるのです」

 ただし、厳しいルールを課す必要はない。夕食は小さめの茶碗に軽くご飯1杯として朝食、昼食は何も制限しない。普段通り何を食べてもよいというメリハリが大切だ。

「3つ目はゆっくり時間をかけて食べること。ゆっくり食べれば太らないし、脂肪肝もできにくい。咀嚼はひと口30回を目指し、食事時間は長くするよう努力します。そのために箸の使い方を変えてひと口の量を少なくするのもいいでしょう」

 昔から「箸先五分(約1.5センチ)、長くて一寸(約3センチ)」という。箸は先から1.5~3センチだけを使うようにすればひと口の量が少なくなり、食事時間も長くなる。

 運動も可能なら毎日30分以上続けてウオーキングするだけでいい。それを裏付ける筑波大の研究がある。

 食事・運動療法に取り組んでいる31歳から67歳の肥満の男性169人を対象に、活動量計を使い運動の記録をとり、脂肪肝がどれだけ改善するかを調べた。

 その結果、ウオーキングなど「中高強度の運動」を週に250分以上、つまり1日30分以上継続して運動すると、脂肪肝を減らすのに効果的だったという。

「運動をすると肝臓などにたまった脂肪は遊離脂肪酸として放出され、運動のための直接的なエネルギー源になります。ただし遊離脂肪酸が使われるのは、運動を開始して10分後くらいから。脂肪を燃焼させるには、ある程度の時間、続ける必要があります」

 他にも「緑茶がいい」「カニやエビに含まれるアスタキサンチンのエキスが効果的」など、さまざまな情報があふれているが軽い脂肪肝なら夕食の工夫と運動だけで十分。

「大事なことはすぐ始められて長く続けられること。すぐに大きくやせるようなストレスがかかるやり方は必要ないし、成功しません」

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