役に立つオモシロ医学論文

「全身持久力」を高めて維持することで糖尿病を予防

「全身持久力」を高め、維持することが大事
「全身持久力」を高め、維持することが大事(C)日刊ゲンダイ

「全身持久力」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。持久力というと、運動におけるスタミナとか、粘り強さのようなものをイメージするかと思います。

 端的にいえば、全身持久力とは長時間にわたり体を動かすことのできる能力のことです。

 全身持久力を高め、それを維持することは健康的なイメージがありますが、日本疫学会誌のオンライン版に「全身持久力と2型糖尿病の発症リスク」を検討した研究論文が2017年11月25日付で掲載されました。

 この研究は、過去8年間において全身持久力が測定され、糖尿病と診断されていない21~59歳の日本人男性2235人が対象となっています。被験者を、厚労省が公表した「健康づくりのための身体活動基準2013」に設定されている全身持久力基準値を満たしているグループと、満たしていないグループに分け、糖尿病の発症リスクを比較検討しました。なお、結果に影響を与えうる年齢、体格指数(BMI)、喫煙・飲酒状況、糖尿病の家族歴などの因子で統計的に補正を行い解析をしています。

 最大で23年間にわたる追跡調査の結果、全身持久力の基準値を継続的に満たしていたグループに比べて、継続的に満たしていなかったグループでは、糖尿病の発症リスクが33%増加することが示されました。

 もちろん全身持久力が高い人は、それなりに健康に気を配ることができる人たちなので、そもそも糖尿病の発症リスクが低いとはいえます。とはいえ、食事や運動療法で、糖尿病の発症リスクが低下することは、過去に報告された研究論文でも示されており、厚労省の定めた全身持久力の基準値はまずまず妥当といえるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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