年をとったら「太る」を目指す

たとえ肥満であっても糖質は1日400キロカロリーは必要

ご飯の量を普段の半分程度に
ご飯の量を普段の半分程度に(C)日刊ゲンダイ

 高齢者では「痩せ」が死を招く大きな問題になります。一方で、高度の肥満も放置はできません。高度肥満のままでは思うように体が動かせませんし、腰、膝、足首に負担をかけます。もちろん、高度肥満が関係する生活習慣病のリスクもあります。高度肥満の人がリハビリを行う場合は、同時に肥満の改善にも努めてもらいます。

 75歳以上で高度肥満の方の目標は、BMI(ボディー・マス・インデックス=体格指数)30未満。「体重(キロ)÷身長(メートル)の2乗」で算出します。体重減少の目安は、1カ月に1~2キロ程度になります。

 この場合、食事の摂取エネルギーを落とすことだけに意識がいくと、タンパク質の摂取量も落ちてしまいます。タンパク質の摂取量が少ないと、体重が減少するときに筋肉が減りやすいです。高度肥満を解消しようとしたために、かえってフレイルやサルコペニアを招いてしまえば、元も子もありません。

 タンパク質の摂取量は落とさず、ミネラルやビタミンの摂取量も落とさない。糖質と脂質の摂取量だけ減らします。通常の食事では実現しにくいので、プロテインパウダーを食事と一緒に取ってもらうことがあります。

「痩せ」の高齢者では、栄養が十分に取れていない段階でのリハビリはかなり制限されますが、高度肥満の方は、腰、膝、足首に負担をかけない筋トレや有酸素運動をしっかりやってもらいます。リハビリそのものが、体重減少につながるからです。

 なお、近年流行している「糖質制限ダイエット」ですが、ご飯の量を普段の半分程度にする糖質制限には、私は賛成です。でも、糖質摂取0グラムを目指す極端な糖質制限には反対です。極端な糖質制限の人は長生きしにくいという報告もあります。高度肥満の人は過剰な糖質摂取を避けねばなりませんが、持論として、1日100グラム(400キロカロリー)の糖質摂取は必要と考えます。

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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