がんと向き合い生きていく

思いもよらない些細な出来事が患者の沈んだ気持ちを変える

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 主婦のBさん(68歳)は卵巣がんと診断されてから15年になります。最初の手術をしてから5年経過したところで腹膜に再発し、この時は死の恐怖からとても落ち込みました。抗がん剤治療で一時は良くなっても、その後に腫瘍マーカーの数値が上昇して4年間は治療を繰り返しました。9年目になって残ったリンパ節を手術し、それからの5年間は再燃なく元気で過ごされています。

 外来を受診された時に「よく頑張ったね」と声をかけると、Bさんは「自分でも本当によく乗り越えられたと思っています」と感慨を口にされていました。そして、次の外来の際には経過を書いたメモを見ながらこんな話をしてくれたのです。

「思い返してみると、最初にがんと言われた時、そして手術、再発した時、化学療法で髪の毛がなくなった時、腫瘍マーカーが上がってきた時、本当にいっぱい悩み、苦しみ、暗い日がありました。でも、私自身がおかしいのかもしれませんが、あんなにつらく、立ち直れないと悩んだのに、そのたびにまったく別の、些細なことで『治るかもしれない』と思えたのです。私は毎日、日記をつけているのですが、それを読み返しても本当にそう思うのです」

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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