クスリと正しく付き合う

無駄な薬を使わないことが国民皆保険制度の維持につながる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 病院に行ったり、薬局で薬をもらったりする際に「高い」と感じることもあるかと思います。しかし、公的保険を使わずに支払う金額はその3~10倍するわけで、そう考えると日本の国民皆保険制度の恩恵は非常に大きいといえるでしょう。

 一方、日本全体の医療費は右肩上がりで国の財政を圧迫しているのは間違いありません。そのため、「医療費自己負担の増加」が議論されています。少子高齢化の背景もあり、このままでは皆保険制度が破綻するのではないかと懸念されています。

 日本はいうまでもなく医療先進国です。これまでと同じように自己負担を少なく高い水準の医療を安心して受けるためには、皆保険制度は必須と言えます。

 かといって、日本そのものが潰れてしまってはどうにもなりません。今後も制度を維持していくためには、「節約」するしかないのです。無駄を省くということです。

 薬に関して言うと、「無駄な薬を使わない」ということになります。

 効果がないのに薬を使ったり、高価な薬と安価な薬で効果に差がないにもかかわらず高価な薬を使う、必要以上に処方する(もらう)といったことが、「無駄」に該当します。

 たとえば、効果の実感はないけれど日常的に胃薬を飲んでいて、場合によっては数種類飲んでいる。ジェネリックは断固拒否する。湿布や保湿剤を「多めに出してください」と医師に伝える……。心当たりのある方もいるのではないでしょうか? 

 こういった事例が医療費の無駄遣いと言えるのです。

 近い将来、「費用対効果」が診療報酬、特に薬価に反映されてくることで、「節約」が進むものと考えられます。

 現在の日本の医療を維持するためには、OTC薬(処方箋がなくても購入できる薬)を利用するなど、「セルフメディケーション」について、国民全体で再度意識を高める必要があるように感じます。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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