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雨の日に膝が痛くなるのは思い込み? 研究論文で真逆の結果

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 天候によって体調が悪くなることは、みなさんも経験したことがあるかもしれません。冷えは腰痛のもとであるとか、雨の日は膝の関節が痛むとか、そういう話は珍しくありません。低気圧が近づくと関節痛や神経痛、あるいは腰痛が悪化するなんていう情報もインターネット上に散見されます。

 降雨と関節痛、腰痛の関連を検討した研究論文が2017年12月13日付で英国医師会誌電子版に掲載されました。この研究は、米国の医療保険データベースから、一般内科医を受診した65歳以上の患者記録1167万3392件を対象に解析を行ったものです。「関節リウマチ」「脊椎症」「椎間板障害」、その他非外傷性関節疾患による関節痛や腰痛での受診率を、雨の降った日と雨が降らなかった日で比較検討しています。なお、結果に影響を与えうる患者の年齢や性別、慢性疾患などの因子で統計的に補正して解析を行っています。

 その結果、関節痛や腰痛による受診は、雨が降った日で6・35%、雨が降らなかった日で6・39%と、雨が降った日で統計学的にも有意に少ないことが示されました。これは雨が降ると疼痛がひどくなるという経験的な仮説とは真逆の結果になっています。確かに統計学的有意といってもその差はわずか0・04ポイントですから、実際的にはほぼ同等ということができますが、少なくとも雨だから疼痛が悪化するという仮説を支持するものではありません。

 もちろん痛みの感じ方は人それぞれなので、天候に影響を受ける方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、本研究が示している可能性は、それが普遍的な事実ではないということです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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