末期がんからの生還者たち

前立腺がん・大腸がん<4>同室患者のすすり泣きに「負けてはいけない!」と

吉田博行さん(C)日刊ゲンダイ

 このときすでに血栓のひとつが肺に飛んでいた。4カ月ほどすると、風邪をひいたわけでもないのに重い咳が出てきた。38度の高熱も続く。再び精密検査を受けると、今度は「薬剤性間質性肺炎症」と診断された。肺炎は気管支などに起こるが、間質性肺炎は肺胞と毛細血管を取り巻く間質による組織に生じる病態だ。

 吉田さんは診察室からICU(集中治療室)に搬送される途中、担当医から「いずれ、気道を確保するために喉を切開することになります。3カ月ぐらい話せませんから、今のうちに奥さんとよく話しておいてください」と告げられた。

 ICUで一晩中マスクを装着して安静にしていると、カーテン越しにすすり泣くような女性の声が漏れてきた。

「重症患者の奥さんか娘さんでしょうか。いつまでも泣き続けている声を聞きながら、なぜか私は『病なんかに負けてはいけない!』と思ったのです」

2 / 3 ページ

関連記事