数字が語る医療の真実

風邪にはビタミンD? 10万人中3000人が予防できる計算

(C)日刊ゲンダイ

 風邪の予防に対するビタミンCの効果は24のランダム化比較試験と統合したメタ分析によって検討されています。

 プラセボ群での風邪の発生が48.3%に対し、ビタミンCのグループでの風邪の発生は52%と効果が認められませんでした。

 ノーベル賞学者ポーリング博士によって一時期、脚光を浴びたビタミンCですが、がんに対しても風邪に対しても、はっきりとした効果がないというのがその結末でした。

 ノーベル賞学者というような権威でも、必ずしも正しくないというのが現実なのです。権威より事実といえば当たり前のことですが、かっけにおける東大医学部の権威の誤りと同じ問題が、ここでも顔を出しています。

 それに対して、ビタミンDの風邪の予防効果はどうでしょうか。

 ビタミンDもビタミンC同様、25のランダム化比較試験を統合したメタ分析という質の高い手法で効果が検討されています。こちらはプラセボ群の風邪の発生が42.2%に対し、ビタミンD群では39.1%と、100の風邪が88まで減るという結果です。

 100が88では大して減らないと感じるかもしれません。しかし、人口10万人の市で全員がビタミンDを飲めば3000人の風邪が予防できることになります。

 ただ、ビタミンDは、余分に摂取しても尿へ排泄されてしまうビタミンCと異なり、過剰に摂取すると体に蓄積してカルシウムが高くなるなどの副作用の危険もあるので、注意が必要です。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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