皮膚を科学する

皮膚のバリアーは死んだ細胞の層 「乾燥肌がかゆい」理由

冬は皮脂や汗の分泌量が減る
冬は皮脂や汗の分泌量が減る(C)日刊ゲンダイ

 冬はかゆみに悩まされる人が増える。肌の乾燥がかゆみの原因になるからだ。なぜ、そんなことが起こるのか。新東京クリニック/美容医療・レーザー治療センター(千葉県)の瀧川恵美センター長が言う。

「かゆみが出るのは、皮膚のバリアー機能が低下してしまうからです。バリアーが効かなくなると、皮膚は丸裸状態。外部からの異物の侵入や摩擦などの刺激を知覚神経が『かゆみ』として感じるのです。乾燥肌のかゆみはバリアー機能低下のシグナルなのです」

 では、なぜ乾燥するとバリアー機能が低下するのか。体の皮膚の表面を覆っている「表皮」は、一番上から「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層からなっている。表皮の新しい細胞は基底層で作られ、ゆっくり上に移動しながら最終的には角層となって約4週間ではがれ落ちる。角層は核のない死んだ細胞が10~20層ほど積み重なったもの。いわゆるアカだ。この角層が皮膚のバリアー機能を担っている。

「体の部位によって違いますが、角層の厚さは平均約0.02ミリ。そこには角層細胞がレンガのようにびっしり並んでいて、その間を細胞間脂質が埋めています。この構造によって、外部からの刺激や体内の水分の過剰な蒸散を防いでいます。もうひとつ重要なのは、角層を覆っている皮脂膜です。皮脂と汗からなり、『天然の保湿クリーム』として角質の表面をコーティングしているのです」

 ところが冬は皮脂や汗の分泌量が減る。皮脂膜のバリアーが機能しなくなると、角層は野ざらし状態に。冬場の乾燥によって、細胞間脂質に適度に含まれている水分が蒸散するため、きちんと並んでいた角質細胞がぐらついてしまう。その隙間から外部の刺激が侵入して、知覚神経が反応するというわけだ。

「乾燥肌になって粉を吹いたように見えるのは、角層細胞が崩れた状態です。かゆいからとかいてばかりいると、その刺激が表皮の下の真皮に存在する肥満細胞を刺激してかゆみ物質のヒスタミンの分泌を促し、さらにかゆみが増す悪循環を起こします。乾燥肌のかゆみを抑えるには、保湿クリームを塗ってバリアー機能を正常に戻してやることが大切です」

 血行がよくなることでも知覚が過敏になってかゆみが増す。アルコールや辛いものは控える、お風呂はあまり熱くしない、こともかゆみ対策になるという。

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