気鋭の医師 注目の医療

超音波内視鏡下治療では検査・治療とも全国トップクラス

手術時間は20~30分、入院期間は従来の半分(右は土屋貴愛講師)
手術時間は20~30分、入院期間は従来の半分(右は土屋貴愛講師)/(提供写真)
土屋貴愛講師 東京医科大学病院消化器内科(東京都新宿区)

 先端に超音波(エコー)装置が付いた内視鏡を「超音波内視鏡(EUS)」という。通常の内視鏡と同じように口や肛門から挿入して、消化管の壁越しにエコーを当てて隣接する臓器などを高解像度で超音波観察ができる。そのため直接内視鏡で観察することができない胆のう、胆管、すい臓の精密検査には欠かせない機器だ。

 同院で胆・すい領域を専門とする土屋貴愛講師(写真)はEUSの名手。検査のみならず、難易度の高いEUSを用いた治療を得意とする。EUSの特徴をこう言う。

「エコー画像はCTよりも分解能が高く、がんなど1~2ミリの病変も分かります。病変の硬さもカラー表示され、造影剤を使えば血流の評価もできます。それに内視鏡の先端から針が出て、組織を採取する生検もできる。針を刺せるということが大事で、それによって治療にも使えるのです」

 EUSを用いた治療は、主にすい臓や胆のう周囲にたまった液体などを排出させる「ドレナージ」。例えば急性すい炎の合併症で、すい臓が溶けて液状化した水が袋状にたまる「すいのう胞」ができる場合がある。水は胃と密着してたまっているので、EUSで胃の方から穴を開け、ステント(プラスチックや金属でできたチューブ)を留置して水を胃に排出させる。胃に開けた穴からは、すいのう胞内の壊死物質を除去することもできる。従来なら開腹手術が必要になる病気だ。

■手術時間は20分~30分

 また、すい臓がんになると、がんの場所によって胆汁が流れる胆管がつぶされてしまう場合がある。すると胆汁が血液中に逆流して黄疸が発生する。その胆汁の流れを開通させる胆管ドレナージもEUSで行うことができる。

「通常、胆管ドレナージは内視鏡で閉塞した胆管内にチューブを通しますが、がんの進行でそれができない場合には、体の外から針を刺してチューブを留置する『経皮経肝胆管ドレナージ』が行われます。しかし、体外に排出させた胆汁をためるバッグを付ける必要があり、腹部の痛みや感染に注意しなくてはいけません。管理が大変です。チューブ留置のために2~3週間の入院が必要となります。一方、体内に排出させる『超音波内視鏡下胆管ドレナージ』はその必要がなく、ステントで肝外胆管と十二指腸をつなぐ方法と肝内胆管と胃をつなぐ方法があります」

 EUSを用いた治療は胃カメラのときと同じで鎮静剤を使い、所要時間はどれも20~30分程度。入院期間は1週間くらいで、低侵襲、術後のQOLも高いので、がんであれば早く本来の治療に専念できるのが大きなメリットだ。

「治療時間は短いですが、EUSを使った治療に精通する医師が最低3~4人は関わるチーム医療で行います。EUSによる精密検査はやっていても、治療まで実施している医療機関が少ないのはそのためです」

 同院の昨年集計では、EUSによる検査数は863件、治療数は263件と全国でもトップクラス。治療中の軽い出血などの偶発症は数%。穿孔や迷入(ステントが外れる)などの事例は、ここ10年みてもほとんどないという。

▽千葉県出身。2002年東京医科大学卒。東京医科大学病院第4内科、手稲渓仁会病院などの勤務を経て、16年から現職。〈所属学会〉日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本胆道学会指導医など。

関連記事