私はむしろCさんと担当医との間に「また治療したい」と言える雰囲気があったことは、とても良かったと思いました。いつでも治療を撤回できる。これが、本当のインフォームドコンセントのあり方だからです。担当医との間にそのようなことを話せる空気が持てない患者さんは少なくありません。
同じような話を聞いたある人から、「恥ずかしくないのかね? 80歳にもなって、『命根性が汚い』(生に対して深い執着心がある)よね」と言われたことがあります。私はそれは違うと思います。まったく恥ずかしくなんかない。それでいいのだと思います。死が差し迫った時は「命根性が汚い」などということはありません。たった一度しかない命なのです。
がんと向き合い生きていく