皮膚を科学する

皮膚が色を感じる不思議 タンパク質「オプシン」が作用か

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人は光や色を目で知覚している。当たり前のようだが、その知覚している光はそもそも電磁波の一種で、固有の周波数(振動数)がある。つまり、振動するエネルギーを目でとらえているのだ。「皮膚は『心』を持っていた!」(青春新書)の著者で、桜美林大学リベラルアーツ学群の山口創教授(人間科学)はこう言う。

「人間が目でとらえることができる光を可視光といいます。可視光には波長の長いものから短いものまであって、その周波数の振動を赤、橙(だいだい)、黄、緑、青、藍、紫など連続的な『色』として認識しているのです。ちなみに波長の短い紫は1秒間に約750兆回の振動数があり、最も波長が長い赤は1秒間に約450兆回の振動数があります」

 可視光より波長が長い赤外線や波長が短い紫外線は、目で見ることができない。ところが「皮膚」という臓器(感覚器)は、赤外線であれば温かく感じたり、紫外線であれば防御するメラニン色素を作ったりと、反応している。可視光にも振動するエネルギーがあるのなら、皮膚も色を感じることができるのではないだろうか。

 人間は目隠しをしていても、赤い部屋と青い部屋では、脈拍や血圧に変化が出るという実験の報告があるという。

「私も学生たちに協力してもらい、赤色と青色の折り紙を置いておき、目隠しをした状態で手をかざしてもらう実験をしました。すると、かなりの割合で当てました。訓練するとある程度分かるようになることもあるといわれますが、訓練していない学生でも偶然以上の割合で分かる結果が出ました。どうやら、皮膚自体が『赤は温かみ』『青は冷たさ』を感じ取っているようなのです」

 不思議な現象だが、大きな色の違いであれば皮膚が感知できる可能性はあるという。その理由は、目と皮膚に共通する物質の存在だ。目の網膜には「オプシン」という光の色(青、緑、赤)をとらえるタンパク質があり、この3つの色をとらえることで赤から紫までを脳が感じることができる。そのオプシンが皮膚にもあることが分かってきたという。ただし、皮膚のオプシンがどう作用するのかは分かっていない。

「タコやカメレオンなどの動物は、周りの環境に合わせて皮膚の色を変えます。それも『目』→『脳』→『皮膚』というルートではなく、皮膚自体が周りの色を感知して環境に同化します。人も皮膚自体が何らかの形で可視光(色)を感知していてもおかしくありません」

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