エアコン暖房で咳が止まらず 冬のカビが思わぬ病気を招く

肺の感染症を引き起こす場合も…
肺の感染症を引き起こす場合も…(C)日刊ゲンダイ

 大寒波の到来で、暖房をフル回転させているなんて人も多いだろう。きちんと手入れしていないまま使い続けると、思わぬ病気を招くことになる。

 寒い屋外から自宅に戻ってエアコン暖房をつけると、なぜか咳、くしゃみ、のどの痛みが続く。そんな人は「カビ」が原因かもしれない。

 カビは、酸素と栄養、それなりの温度と湿度がある環境ならばどこにでも発生する。目に見えないカビの胞子は空気中にも漂っていて、知らず知らずのうちに吸い込んでいる。それを繰り返していると体内で抗体がつくられ、アレルギー反応を起こして健康被害が表れるケースもある。

 東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏(感染症学)は言う。

「カビというとジメジメした梅雨や夏の時季をイメージしますが、近年は冬でも減りにくい環境が整っています。鉄筋コンクリートのマンションなど、いまの住宅は気密性が高いうえ、冬は暖房で暖かく、加湿器で適度な湿度も維持されている。人間にとって快適で便利な環境が、カビを増やしているのです。とりわけ、エアコンの手入れをしていない場合、エアコンの内部やフィルターに繁殖したカビが空気中に放出されます。知らず知らずのうちにカビを吸い込み続け、冬でもカビによるアレルギー症状を発症するケースが増えているのです」

 さらに、現代の清潔で快適な生活環境そのものがカビなどのアレルギー発症の一因にもなっている。イギリスの研究者が唱えた「衛生仮説」によると、人間は清潔にしすぎると免疫調整力が低下し、アレルゲンを排除しようとする抗体の働きが乱れ、アレルギーを発症しやすくなるという。現代の暮らしは、アレルギーの原因物質であるカビが増えやすい環境と、免疫力が低下しやすい環境が揃っているといえるのだ。

■寝具はこまめに洗濯・掃除を

 アレルギーを防ぐために、まず注意すべきは「クロカビ」と呼ばれるカビの一種「クラドスポリウム」だという。

「室内に最も多いカビといわれていて、アレルギーの原因物質になります。繰り返し吸い込むと、咳、のどの痛み、痰、鼻水、鼻づまりといった呼吸器系のアレルギー症状が表れます。クラドスポリウムは、台所、風呂、洗面所、トイレといった水回りや、結露ができやすい窓枠のパッキンなどにも発生します。エアコンの内部やフィルターにも繁殖しやすく、エアコンをつけた時に咳やのどの痛みが表れる場合は要注意です」

 また、「アスペルギルス」が原因になる「アレルギー性気管支肺アスペルギルス症」にも気を付けたい。

「『コウジカビ』ともいわれるカビで、その胞子は自然界のいたるところに存在します。パンやお餅などの食品に発生するカビはこの種類が多く、エアコンや枕にも繁殖します。アスペルギルスを吸い込むと体内で抗体がつくられ、アスペルギルスが停滞増殖するとアレルギー症状が表れます。また、免疫力が低下している人が吸い込むと肺の感染症を引き起こすケースもあります」

 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症を発症すると、喘鳴、湿った咳、息切れ、微熱といった症状が続く。喘息と区別がつきにくいため、何かおかしいと感じたら医療機関で血液検査を受けたほうがいい。

 カビによるアレルギーを予防するには、とにかく身の回りのカビを増やさないことが重要だ。長時間過ごすことが多い寝室やリビングの換気は十分に行い、結露がある場合は必ず拭く。エアコンの手入れはもちろん、寝具やカーペットなども小まめに洗濯、掃除しておきたい。

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