気鋭の医師 注目の医療

「認知症カフェ」には専門医が常駐 プログラムも毎回違う

認知症カフェ(左は内田暁彦院長)
認知症カフェ(左は内田暁彦院長)/(提供写真)
内田暁彦院長 目白MMクリニック(東京都豊島区)

 団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者は700万人前後に達し、65歳以上の約5人に1人を占めるとされている。15年に国が打ち出した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、その中心施策のひとつとして「認知症カフェ」が位置づけられている。

 認知症カフェとは、認知症の人とその家族、地域住民、介護や医療の専門職の人など、誰でも気軽に参加でき、認知症に関する情報を交換したり、交流を図ったりする場所のこと。運営者や開催場所などには特に基準はなく、全国の市区町村で開催件数が急増している。

 同院は、院長と副院長が夫婦で、ともに認知症専門医。16年3月に認知症専門外来をもつ精神科クリニックを開業、当初から月1回ペースで認知症カフェ(目白MMカフェ)を開催し続けている。場所は、近くの有料老人ホームの一角を借り、参加費は100円。1回の開催(2時間)に平均10人ほどが集まるという。

 認知症カフェは、個人またはNPO法人や介護事業所、家族会などの団体が運営していることが多いが、医療機関が自ら運営、開催しているのは珍しい。内田暁彦院長(顔写真)はこう言う。

「勤務医では病院の方針などで、専門的にやりたい診療も限られるので開業したのですが、認知症カフェは以前から始めたいと考えていました。当カフェは区内(昨年5月時点で13カ所)で2番目に古いのですが、認知症専門医が常駐しているのが一番の特徴といえるでしょう」

■早期発見の窓口にも

 認知症カフェには自由に時間を過ごしてもらうことを目的としたタイプのカフェもあるが、同カフェの場合は毎回異なったプログラムを用意している。認知症予防に対したとえば「合唱」「茶道」、昔の楽しい思い出を語り合う「回想療法」、カルタやトランプなどの「脳活性化リハビリ」、認知症の基礎知識を学ぶ「講話」など。そして、一つ一つの何げないプログラムにどのような意味があるのか、認知症患者の家族や一般参加者に説明するようにしているという。

「合唱であれば、患者さんが若いころの時代の曲を歌って昔の快刺激を呼び起こす。マッチ棒パズルであれば、空間認知能力の刺激になります。また、茶道は患者さんにお茶の先生がいるので指導をお願いしているのですが、患者さんに役割を持っていただくとやりがいをもって参加してくれます。日課にしているストレッチ体操を参加者に教える患者さんもいます」

 内田院長が認知症カフェを始めて感じたことは、地域に認知症を専門とする医師が少なく、家族が認知症を疑ったときにどこへ相談すればいいのか分からない人が非常に多いことだという。その点、気軽に相談できる認知症カフェは早期発見の窓口にもなっている。

「それに患者さんがデイサービスに行っている間に、介護者の奥さんが息抜きの場として参加されることもあります。他の患者さんと交流することで、認知症に対して客観性をもてるので、家族にとってはとても励みになります」

 認知症の進行は止められないが、患者が地域でどう自分らしく生活していけるかが重要。そのためにも認知症カフェを上手に活用してもらいたいという。

▽東京都出身。東京理科大学卒後、2006年旭川医科大学卒。東京慈恵会医科大学病院麻酔科、精神科の医師として初石病院、浅井病院などの勤務を経て、16年に開業。〈所属学会〉日本精神神経学会専門医、日本認知症学会専門医、精神保健指定医など。

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