独白 愉快な“病人”たち

美容家・岸紅子さん チョコレート嚢胞を患い生き方見直す

「病気は生き方を変えるチャンスだった」と岸紅子さん
「病気は生き方を変えるチャンスだった」と岸紅子さん/(C)日刊ゲンダイ

「よくこれで普通に生きてこられましたね」

 最初に診察を受けた医師にそう言われました。受診したのは結婚したての31歳のとき。妊娠・出産を前に体の状態を知っておこうと、夫とともに行ったブライダルチェックでした。特別不調を感じていたわけではなかっただけにショックでした。しかも、「今の状態ではお子さんは難しい」と言われてしまったのです。

  病名は子宮内膜症の一種「チョコレート嚢胞」でした。子宮内で起こるべき月経が卵巣で起こってしまい、流れ切らなかった月経血が少しずつ蓄積されてドロドロしたチョコレート状になり、卵巣にたまる病気です。

■両方の卵巣が通常の約3倍に巨大化

 2つある卵巣の両方ともが巨大化していて、それぞれがおよそ9センチにもなっていました。通常の卵巣は2~3センチですから約3倍。そんな状態だったとは、まったく予想していませんでした。それまで、経血の量の多さや月経痛を感じてはいたものの、「これが普通。みんなこんなもんだろう」と思って痛み止めの薬を常用していたのです。でも、それは体からのSOSだったんですね。

 病院で勧められた治療は開腹手術による病巣の切除でした。創口の小さい腹腔鏡では難しいとのことだったので少し躊躇し、セカンドオピニオンを受けてみました。すると、そこではホルモン療法を提案されました。嚢胞は月経のたびに大きくなるので1・5カ月ごとに注射をして月経を止め、次第に小さくする治療法です。「小さくしたら子供を産めるかもしれない」という医師の言葉もあり、ホルモン療法を始めました。

 でも、月経を止めるということは閉経状態になるわけで、更年期障害と同じようにホットフラッシュやイライラに悩まされました。肌荒れもひどく、外に出たくない、人に会いたくないと心のバランスも崩して、仕事もままならないボロボロの状態になりました。

 しかも、1年半もそんな副作用に耐え続けたのに、検査で腸と卵巣が癒着してしまったことが判明したのです。子供が欲しかったので、癒着を剥がしつつ病巣だけを切除できる腹腔鏡手術を行っている病院を紹介してもらい、手術を受けました。病巣は少しずつ薄皮を削るように切除していただいたようです。

 退院時、医師から「卵巣が健康になったので、ここから数カ月間が一番妊娠しやすいですよ」と言われました。早速、夫婦で伊勢神宮を参拝して正式にご祈祷していただき、その後、無事に妊娠、出産することができました(笑い)。

■仕事最優先の生活を見直した

 ただ、チョコレート嚢胞は再発しやすいということで、それまでの生活を振り返って「なんで病気になったのか」を考えるようになりました。

 思えば、それまでの生活は仕事最優先でした。忙しいことを言い訳に食事はコンビニや外食ばかりで、不規則な上に運動不足。季節の移ろいにも気付かないような人間らしくない生活でした。「人の思いにどう応えていくか」ということばかりを考えて、自分への愛が足りなかったのです。

「心と体はつながっているんだ」と気付いて、人間らしい生活をするための勉強を始めました。

 まず、起床時間を朝6時30分と決めました。すると、夜12時前には眠たくなるんです。そして1日3食を大事にするようになりました。やむを得ず外食するときはオーガニックのお店選びやメニュー選び、体を冷やさない食材選びに気を付けました。その結果、35度台だった平均体温が36.5度になりました。平均体温が上がると免疫力も上がるんです。

 勉強をしてみて初めていろいろなものが体に悪影響を与えていることを知りました。現代女性は昔と比べて出産の数が少ない分、一生涯における月経の回数が多く、それによって子宮がんのリスクが高いなど、弊害も多いんです。

 食品添加物ばかりではなく、世の中には「内分泌かく乱物質」があふれていて、ホルモンバランスを乱していることも知りました。たとえば、プラ容器の弁当をレンジ調理しても発生します。生理用品などはまさに化学物質の結晶です。それらの化学物質は皮膚からも体内に吸収されます。

 特にデリケートゾーンの吸収率は、腕や脚の皮膚の何十倍も高いそうです。オーガニックコットンでできた布製の生理用品を使うだけで、生理痛が変わるともいわれています。もちろん、実践するしないは自由ですが、知っていて決して損はない情報ですよね。

 今の女性たちにそういうことをもっと知ってほしい。その思いが今の仕事につながりました。私にとって、病気は生き方を変えるチャンスだったのだと思います。

▽きし・べにこ NPO法人「日本ホリスティックビューティ協会」代表理事。自らの病を克服した経験を経てNPO法人を設立。2010年から「ホリスティックビューティ検定」を開始。「温活」「菌活」「腸活」といったセルフケアの考え方を普及。オーガニック&ウエルビーイングのムーブメントを牽引している。

関連記事