1週間体験した 睡眠時無呼吸症候群「CPAP療法」の効果

これがCPAP
これがCPAP(提供写真)

「寝ているとき、しばらく呼吸していない」「いびきがうるさい」――。家族からそんな指摘があった。そういえば、夢の中でずっと水中にいて、苦しさが限界を迎えて「プハーッ!」と目が覚める。そんな経験が何度もある。これは「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)に違いない。40代の日刊ゲンダイ記者が「CPAP療法」を試してみた。

 WHO(世界保健機関)の定義では、「一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上起こるか、睡眠1時間当たりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上」の場合、SASとされる。

 寝ている間に何度も呼吸が止まると、交感神経が活性化することで、心臓、脳、血管に大きな負担がかかる。内分泌系や免疫系にも支障を来し、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、心房細動、糖尿病などさまざまな病気が起こりやすくなることがわかっている。

 一刻も早く改善しなければ、自分の身にいつ何が起こってもおかしくない……。治療を受けるため、梶本修身医師が院長を務める「東京疲労・睡眠クリニック」(東京・港区)を訪れた。

 SASで一番多いのは、空気の通り道である気道の一部が狭くなったり塞がったりして、呼吸が一時的に止まる「閉塞型」だ。この閉塞型の治療に使われるのがCPAPで、エアチューブを接続した鼻マスクを装着し、本体から適当な圧を加えた空気を送り込む。鼻から気道へ空気が送り込まれると気道が広がって通りがよくなり、無呼吸やいびきが改善される。

 まずは、SASかどうかを調べるため、自宅で簡易型のPSG検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)を行う。センサーキャップに人さし指を差し込み、手首に腕時計のような本体を装着して眠るだけ。起床したら装置を宅配便で送り返せば終了だ。後日、検査の結果を聞きに行くと、無呼吸と低呼吸の回数が1時間当たり59回もあることがわかった。診断では、1時間で5~15回なら軽症、15~30回で中等症、30回超が重症とされている。このまま放置していたらいつ死んでもおかしくない――。すぐにCPAPを始めることにした。

「CPAPは“相性”がピタッと合えば睡眠の質が劇的に改善されます。自分でもずっと使用していますが、初めて使った時は起床時の爽快感に驚いたほどです。ただ、マスクを装着するため、人によってはフィットせずにどうしても気になってしまったり、なんとなく息苦しい感じがして、いつまでも慣れないといった理由で断念されるケースが3割ほどあります。最初は違和感がありますが、慣れれば気にならなくなってくるので、まずはガマンして使ってみてください」(梶本院長)

■最初はマスクに違和感も

 たしかに最初は違和感だらけだった。何よりも気になったのは、鼻呼吸しなければならないこと。鼻を覆ったマスクから空気が送り込まれるので、口呼吸すると口から空気が抜けて呼吸しづらくなる。幼少の頃からずっと片方の鼻が詰まっていて口呼吸が当たり前だっただけに、ダメかもしれないと思った。しかし、マスクを装着して口を閉じ、恐る恐る鼻呼吸だけにしてみると、息苦しさはまったく感じない。日中も自然と鼻呼吸になっている時間が増えた。

 また、マスクのフィッティングもなかなか難しい。あおむけに寝転んだ姿勢でフィットするポジションを見つけても、寝返りをうつとマスクがずれてしまい、気づくと空気が漏れているケースがある。ずれないように意識して眠っているため、目覚めたときに肩や首に張りを感じるケースもあった。

「無呼吸が改善すると寝返りの回数も減ってくる」(梶本院長)というから、慣れれば問題なくなるかもしれない。

 ただ、そうした違和感以上に効果を実感した。パッと目覚めた時にすっきり覚醒している感じがある。普段なら目覚めても眠気があって二度寝するのがお決まりだったが、そんな気にならないくらい目覚めがいいのだ。

 CPAPを1週間ほど試した後、本体のSDカードに記録されている睡眠データをクリニックで確認すると、1時間当たり59回だった無呼吸が、なんと0回に改善していた。いびきもほとんどかいていなかった。

 治療費は、保険適用で簡易PSG検査が3000円、CPAPは月4700円ほど。

 これで無呼吸といびきが改善されるなら価値はある。

関連記事