この20年近く、岡田隆さん(60歳=愛知県豊田市在住)は、がんと共存してきた。
原発「S状結腸がん、ステージⅢb」に始まり、肝臓、肺に転移し、「虎の門病院」(東京・港区)で、死と隣り合わせのような大きな手術を3度も経験する。
術後、抗がん剤治療がスタートし、並行して、再発、転移を抑えるために定期的な検査も継続してきた。
岡田さんの治療日誌から、主な検査項目を紹介してみよう。
●2007年5月、治療(手術、抗がん剤点滴)終了後、半年に1度の検診(現在も継続中)
●同年6月、腹部超音波検査
●2015年7月、腸内視鏡、胃カメラ、胸部X線、CT(造影剤)、血液検査
●2016年6月、超音波、血液検査
●同10月、尿、血液検査、腹部CT検査(バリウム)
●同年12月、腹部超音波、血液検査、各種指標悪化
●2017年5月、肝臓転移術後、17年経過、定期検診変化なし
●同年6月、検査腫瘍マーカー安定、血糖値、糖尿悪化
●同年11月、(腎臓肥大)のために尿、CT検査実施、3個の結石指摘、処方。肝臓に腫瘍らしきものを所見
●同年12月、再度、腹部超音波検査及びMRI検査受診、しばらく様子見
●2018年1月、X線検査、尿検査2回、CT、血液検査実施(2月に結石除去手術予定。肝臓内異物について引き続き様子見)
■医療ボランティアを含めた社会貢献がしたい
気も遠くなるようなこうしたがん治療の体験を重ね、岡田さんは多くのことを学んだ。
大手金融機関に勤め、仕事人間だった岡田さんだが行動や考え方も変わったという。
「完璧な医療体制を知り、また新たな人との出会い、長い入院治療の間に、英語のラジオ講座・映画に触れるなど新しい楽しみも見つけました」
米国の有名ながんセンターなどで、治療の副作用を和らげる目的で、統合療法として、「太極拳」「鍼灸」などもやっていると知ると、「本当にやっているのかと、米国を訪ねて視察し、専門医師に遠慮なく質問もしました」。
米国の各施設では、いずれも「よく来ましたね!」と歓迎されたという。
2006年に「5年生存率」を超え、翌年の07年、病院の担当医の先生から「一切のがん治療は終了しました」と告げられる。思わず人知れず、涙がこぼれた。
しかし再発、転移を考慮し、定期的な検査、検診を怠っていない。
「現在まで、命があることに感謝、恩返しとでもいうのでしょうか、これから先、医療ボランティアを含めた社会貢献を少しでもできればと思っています」
岡田さんはそう言い、顔をほころばせた。
末期がんからの生還者たち