天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

より信頼性の高い大規模データの収集は積極的に進めるべき

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■学会が約1万人の患者を対象とした調査を開始

 ただ、欧米人と日本人では体格や病状などに違いがあるため、ユーロスコアは日本での実態と乖離があると考えられていました。そこで、日本人の臨床データに基づいたリスク解析モデルを構築しようと2001年8月から臨床データの入力が開始され、徐々に全国に広まって今に至ります。

 リスクスコアと同じく、日本における診断や治療法に関するデータはまだ十分とはいえず、信頼の置けるエビデンスがはっきり確立されているとは言い切れない領域があるのも事実です。

 そうした現状を受け、日本循環器学会は約1万人の患者を対象とした調査を始めています。心不全や心筋梗塞などの心臓疾患で入院している患者を無作為で選び、治療内容や治療後の症状の変化といったデータを集め、治療に役立てる狙いです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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