日本人の平均点

【健康編】健康寿命を超えて元気でいる秘訣は転ばないこと

健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳
健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳(C)日刊ゲンダイ

「A1c、どうだった?何ぃ、6.8まで下がったぁ。負けた~」

 健康診断のあと、他人の血糖値を聞いて一喜一憂するサラリーマンは少なからずいる。問題の本質は自分の血糖値が基準値以内かどうかのハズだが、人の数字がつい気になってしまう。

 今週は、健康や給料など日本人の平均値を追う。果たしてアナタは、平均より上か下か、それとも人並みか。初回は「健康編」――。

 日本人の高齢化は進む一方だ。昨年7月、厚生労働省が発表した平成28年簡易生命表の概況によると、2016年における日本人の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳だった。まさに、人生100年時代を裏付けるデータだが、問題はむしろ「健康寿命」ではないかという意見がある。

 厚労省は、健康寿命を“健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間”と小難しく定義している。要するに、普段から健康的に元気で生活したり、仕事や趣味もやれる年齢とでもいうべきか。

 この健康寿命の最新データは、男性71.19歳、女性74.21歳。アナタ自身はもちろん、親たちがこの年齢を超えてもピンピンして仕事や趣味に打ち込んでいたら、それこそ紛れもない“平均点以上”の元気ジジババと評価していい。

 先ごろ、「手術するがん、しないがん」を上梓した、医師でジャーナリストの富家孝氏が言う。

「私はいま71歳。ちょうど男性の健康寿命の年齢ですが、高校や大学の同級会に出ると大半が高血圧や血糖値や何かしらの薬を飲んでいます。中には、私もそうだけどがんや心臓病の手術経験者もいる。つまり、医者の世話になっているものの、ソコソコ元気でゴルフや旅行を楽しんでいます。問題はこの先、健康寿命年齢を過ぎてからでしょう。一番大事なのは転倒しないこと。転んで骨折、入院中に誤嚥性肺炎を起こして死に至るケースはよくありますから。70歳前後となると、筋肉量は20代の6割程度に減ってしまう。踏ん張りが利かなくなると自覚して注意することに尽きます」

 働くことができるなら65歳や70歳まで仕事をした方がいい。家の外で体を動かすことで筋力を維持できる。家庭菜園などの趣味は有酸素運動で持久力がつくという。こうした習慣も“平均点超え”にプラスになる。

■がん年齢罹患率

 37万2986人――。最新の「がん統計」(国立がん研究センター)によると、16年にがんで死亡した人は37万人を超え、全死因の約28%だった。

 また、生涯でがんに罹患する確率は男性62%、女性46%と驚くほど高い。がんは、日本人の寿命が延びるのに合わせるように増えてきた、高齢化社会の副産物なのだ。

 先の「がん統計」には年齢階級別の罹患率を表すグラフもある。

「がんの罹患率が高まり始めるのは男女ともに45歳以降で、50歳を超えてから徐々に高まっていく。女性は比較的緩やかですが、男性は60歳を過ぎると急カーブで上昇。65歳以降、一気に罹患率が高まる。つまり、データ上は50歳までは、がんはあまり気にしなくてもいい。がん年齢といいますが、60~65歳くらいがポイントになります」(富家孝氏)

 もっとも、無事に65歳を超えたからといって安心はできない。がんリスクは加齢とともに増していくからだ。

「超高齢化社会において、2人に1人ががんになって亡くなるということは、それは“自然死”ではないかと思うんです。私は75歳過ぎてからのがん手術は反対ですし、今後はがんにかかったらどんな治療を選ぶか、事前申告制度をつくればいいと思っているんですがね」(富家孝氏)

 65歳前後はがん検診を怠ってはいけない。