末期がんからの生還者たち

すい臓がん<1>「患者の列を飛ばして診察室に呼ばれ…」

池田実さん(提供写真)

 このとき、詳しい病期の説明はなかった。ただ「すい臓がん」と告知されたことだけが頭に残った。

 入院を1日だけ延ばしてもらった池田さんは、待合室で待つ妻に、「すい臓がん」であることを知らせた。妻は言葉なく、深いため息を漏らしたという。

 重い足取りで病院の玄関を出ると、53歳のとき、すい臓がんで他界した義兄の笑顔が浮かんだ。その足で会社を訪ね、社員に病名と、あすからの入院を伝える。

 唐突な「がん告知」にショックを受け、今後の治療や5年生存率など考えているゆとりがなかった。帰宅して入院の準備など慌ただしく過ごし、翌日に入院した。

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