皮膚を科学する

「スキンシップが多い子供ほど学力が高い」のはなぜだ?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 国内企業が行った調査に、小学生のときに親からのスキンシップが多かったという子供ほど、中学生になったときの学校の成績が高いという報告がある。海外の研究でも、乳幼児のときからのスキンシップが多いと、将来的に判断力や推理力が高まると報告されている。

 子供の皮膚を触れることと学力向上に、どういう関係があるのか。桜美林大学・リベラルアーツ学群の山口創教授(人間科学)が言う。

「小学生のときにスキンシップが多いほど学校の成績がいいという報告は、それだけ親が教育熱心という要素の影響が大きいと思いますが、後者の海外報告は別のメカニズムがあると思います。それはスキンシップによって脳内の“オキシトシン”というホルモンの分泌が増え、認知発達を促す作用があるからです」

 国内外の研究では母乳で育てた子供は認知発達がいいことが多くの論文で報告されている。これも母乳の成分が関係するのではなく、授乳するスキンシップによってオキシトシンが多く分泌されることが認知発達にいい影響があると考えられているという。

「オキシトシン」は、脳の下垂体から分泌されるホルモン。ストレスを緩和し幸せな気分をもたらしたり、信頼や愛情の感情に関わることから「幸せホルモン」「愛情ホルモン」「絆ホルモン」などと呼ばれる脳内物質だ。

「フィンランドの子供が毎年、PISA学力調査で上位にランクされています。その理由として家庭でも学校でもスキンシップが多いことが指摘されています」

 山口教授の研究でも、小学生に自画像を描いてもらい、各子供の知能指数を出してみたところ、家庭でよく触れられている子供は、あまり触れられていない子供に比べて、知能指数が高い結果が出ている。自画像を分析すると家庭で触れられた子供ほど自尊心が高いことが分かったという。オキシトシンは日常的に触れ合うことで分泌が高まり、効果が増していく。しかし、子供が思春期になると触れることを嫌がるようになるので、触れ方にもコツがいる。

「部活や勉強を励ますように『頑張れよ』と肩を叩く程度でもいいのです。それに運動部であれば筋肉痛に悩まされることが多いので、マッサージをしてあげれば自然に触れることができます」

 夫婦間でも触れ合うことが大事。山口教授は「脳と皮膚の細胞は同じ『外胚葉』でつくられていて、皮膚は『露出した脳』なのです」と言う。

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