末期がんからの生還者たち

すい臓がん<2>「私が手術します。手術適応がないので他ではやらないでしょう」

池田実さん(C)日刊ゲンダイ

 検査の結果、「すい臓がん」は、腹腔動脈、脾動脈、脾静脈、総肝脈に絡みつきながら進行していた。

 外科的にがんを切除するとき、もしこの大事な血管類を傷つけ、あるいは削除した場合に命を落とす。そのため、手術適応のボーダーラインを越えていると判断され、余命3カ月を宣告された。

■肉眼で見える範囲のがんは取り切った

 入院から1週間を経た9月初旬、池田さんの病室に高森繁院長(現千葉県市原市「五井病院」院長)が顔を見せ、院長室に誘われた。このとき高森院長はこう言ったという。

「私が手術をしましょう。この診断結果を見ますと、もはや手術適応ではないし、リスクも大きい。一般的な大学病院や有名病院では、手術を行わないところが多いと思いますが、私がやってみます」

 院長の気迫がこもった強い決断に、対面して聞いた池田夫妻は目を合わせ、頬がかすかに緩んだと感じたという。

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