「もしかしたら私は助かるかもしれないと思った瞬間でしたね」
手術日は早かった。院長から「私が執刀する」と告げられた2日後の9月6日、妻と娘さんに見守られて池田さんは手術室に入った。
正式な手術名称は「遠位側膵切除(脾合併切除)腹腔動脈幹、門脈合併切除」である。約5時間に及ぶ手術で、長さ4センチという腫瘍や、腹腔動脈幹なども切除された。
手術室から院長が、マスクを外しながら出てきた。廊下で待機していた妻のもとに、銀色のトレイに載った腫瘍を包み込んだすい臓の断片を見せながら、
「奥さん、うまくいきましたよ。肉眼で見える範囲のがんはすべて取り切れました」
院長の笑顔に妻は目を潤ませたという。
末期がんからの生還者たち