役に立つオモシロ医学論文

喫煙本数が少なければタバコは体に害はない?

やはり禁煙が大切
やはり禁煙が大切(C)日刊ゲンダイ

 喫煙が健康に悪影響を与えることはご存じかと思います。しかし、「喫煙本数が少なければそれほど害はないのではないか」と考えている方もおられるでしょう。英国医師会誌電子版に、喫煙本数の少ない人における心臓病や脳卒中のリスクを検討した研究論文が2018年1月24日付で掲載されました。この研究は過去に報告されている55件の研究を統合解析したもので、喫煙本数が1日1本の場合のリスクと、1日20本の場合のリスクを喫煙未経験者と比較して男女別に解析しています。

 その結果、男性において、心臓病のリスクは、1日1本の喫煙で1.74倍、1日20本の喫煙で2.27倍でした。脳卒中のリスクも同様に1日1本の喫煙で1・30倍、1日20本の喫煙で1・56倍となっています。また女性においても、心臓病のリスクは1日1本の喫煙で2.19倍、1日20本の喫煙で3.95倍、脳卒中のリスクは1日1本の喫煙で1.46倍、1日20本の喫煙で2.42倍でした。

 たとえ1日1本の喫煙だったとしても、喫煙未経験者に比べて心臓病や脳卒中の発症リスクは統計学的にも有意に増加し、そのリスクは1日20本喫煙する人のリスクの約5割に匹敵することが示されています。言い換えると、たばこを1日20本吸っている人が、1日1本に減らしたとしても、リスクは20分の1になるのではなく、半減するにとどまるということです。

 たった1本でもリスクが増加するというこの論文結果は、心臓病や脳卒中のリスクを増加させないような安全な喫煙本数が存在しないことを示しています。心臓病や脳卒中のリスクを増加させないためには、喫煙本数を減らすのではなく、やはり禁煙することが大切なのでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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