僧帽弁の形成術は、こうした血管合併症対策と心筋の保護に関して比較的シンプルな作業で済むことが多いといえます。僧帽弁の形成術だけを受ける患者さんは動脈硬化を合併しているケースが少ないので、その場の判断でバイパスなどの処置は必要ありません。心筋保護もほぼ一定の均一化された方法で十分な効果が発揮されます。つまり、弁形成という単純な一次作業に集中できる術式なのです。
こうしたさまざまな要因から、僧帽弁閉鎖不全症に対する胸腔鏡下弁形成術のダヴィンチ手術が保険適用になったと考えられます。
ただ、ダヴィンチは高額で定価が1台約3億円、鉗子などの使い捨ての機材は1回あたり50万円ほどかかるため、一般的に広く浸透するまではまだ時間がかかりそうです。ただ、保険適用されたとなれば、希望する患者さんが急増するのは確実です。当院も最上位機種のXiを購入予定で、高度な手技に対応する準備を進めています。今後、徐々に広まっていくのは間違いありませんが、手術が必要と診断された患者さんは、十分に事前情報を得てから受けられるのがよいと思います。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」