末期がんからの生還者たち

すい臓がん<3>「娘も独立し、がんで死ぬのも悪くないと」

池田実さん(提供写真)
池田実さん(提供写真)

 2012年9月、池田実さん(74歳、千葉県船橋市在住)は「千葉徳洲会病院」で「すい臓がん・ステージⅣa」と告知され、手術を受けた。

 目に見える腫瘍は全摘されたが、術後の体調回復は容易ではなかった。まず、食事がとれない。衰弱も著しく、点滴から栄養剤を入れた。それだけでなく毎日、妻と娘がおいしい食事を作って病院を見舞ってくれた。

 千葉徳洲会病院は、池田さんの自宅から徒歩5分の近距離。病室の窓から自宅の方を見つめ、「もう、自宅には帰れないかな」と、思っていたという。

■2カ月の入院で体重は18キロ減

 こうした闘病が1カ月ほど続いた後に、医師は2度目の手術に踏み切る。急性無石胆のう炎を起こしており、壊死の状態まで悪化していた胆のうを全摘出したのだ。

 5時間を要した手術が、次第に体調を回復させてくれたのか、10月に退院。妻の肩を借りて自宅に戻った。入院2カ月の間に体重は63キロから45キロまで落ち、体は骨と皮ばかりである。

「私はこの時68歳でした。娘も一人前になって独立したし、がんで短期間に死ぬのも、人生の終わり方としては悪くはないと思いましたね」

 11月20日から、「抗がん剤」の治療が始まった。毎週1回、通院して点滴による抗がん剤(ジェムザール)を投与。4週間を1クールとして11回、ほぼ1年間続けた。

 副作用はだるさと、うつ症状程度。思っていたより軽かった。体重も45キロから49キロまで回復した。

 13年末に抗がん剤治療が終了し、医師から「再発」の兆候なしと診断される。池田さんは2年ぶりに、05年に自分が立ち上げたITベンチャー会社に復帰した。

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