がんと向き合い生きていく

「少ない資源の有効活用」が必要だと退院を勧められた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Y君は40歳を過ぎてからは労務管理担当を任され、組合対策や“人減らし”を仕事にしてきました。職場の部屋の壁には「少ない資源の有効活用」と大きな文字で書かれた標語が貼られていて、Y君は毎日それを見ながらいかに効率を上げるかを考えて仕事を続けてきたといいます。上司からも、耳にタコができるほど「効率性優先」と「資源の有効活用」を言い聞かされていたそうです。

 50歳を越えた頃からは、今度は自分が後輩に「少ない資源の有効活用」を説き、いつも頭の中にある営業の目標数値を気にして生きてきました。

 65歳になって定年を迎えた時は、会社の経営状態が悪く、退職金は思ったよりも少なかったそうです。

 そのかわり、会社からは「給料は減るが嘱託として75歳まで働いていい」と言われました。Y君は「75歳まで? じゃあ、人生ずっと働き続けじゃないか……」と思ったといいますが、住宅ローンは終わったとはいえ食べていくためにはまだまだ働かなければいけません。そのまま働くことを選びました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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