■終末期でも「効率」が優先される
そんなY君に進行肺がんが発覚し、背中にひどい痛みがあったことで緩和ケア病棟に入院しました。治療の効果もあって痛みが少し和らぐと、Y君は担当医からこう勧められたといいます。
「痛みが薄らいだようですから、退院してください」
Y君としては、もう少し入院したまま様子を見たかったそうです。しかし、担当医からさらにこう告げられました。
「自宅で様子を見ましょう。この緩和病棟は、たくさんの患者さんに利用していただかなくてはなりません。『少ない資源の有効活用』が必要なのです」
これまでの長い会社員生活で自分の頭にこびりついている「少ない資源の有効活用」という言葉を、まさか緩和ケアの担当医から聞かされるとは……。Y君は驚いたといいます。
がんと向き合い生きていく