独白 愉快な“病人”たち

甲状腺がん再発3度 斉藤こず恵さん“過剰ダイエット”の後悔

過去に受けたダイエット企画は「ざっと60回はやりました」
過去に受けたダイエット企画は「ざっと60回はやりました」/(C)日刊ゲンダイ

 7年間のがん治療で総額2000万円以上かかりまして、医療ローンを組みました。今も返済中です。かつてアメリカ人と結婚して米国に住んでいた時期もあったので、日本の国民健康保険がなかったという経緯もあるんですけれど……。

「甲状腺がん」と診断されたのは2004年です。13年でがん治療は一応終了しましたが、その間に3回再発していますし、治療終了から5年以上経つ今も油断できない病気です。

 実は、家族や親戚にも甲状腺の病気を持つ人がいたので、今にして思えば小さい頃から甲状腺機能に異常があったんじゃないかと思います。背が伸びなかったのもそのせいかも。成長ホルモンは甲状腺から出るものですから。

 でも、そんな素地があったことなど知らずに、34歳の頃から雑誌やテレビのダイエット企画のお仕事を立て続けに受けていました。当時の体重は97キロ。そこから1年半で42キロまで落とす過激ダイエットも実際にやりました。そして、リバウンドしては新たなダイエット企画をまた受けるの繰り返し……。今までざっと60回はやりました(笑い)。

「結果を出さなきゃいけない」と頑張るうちに首のむくみや、酸素欠乏で指先がしびれるなどの症状が出ることもしばしばでした。で、とある媒体の企画でお会いした医師から「やり過ぎでは? 一度病院に行ったほうがいい」と言われて受診したところ、「甲状腺機能低下症」と診断されました。この病気は、海藻類などは基本的にNG。なのにすでに海藻ダイエットも経験した後でした。

■「仕事は3年間ほぼできませんでした」

 がんの発覚は、甲状腺機能低下症と診断されたすぐ後です。ファルセット(裏声)が出ない状態が何カ月も続き、歌の仕事に支障を来すようになって知り合いの医師を訪ねました。画像診断で「甲状腺にぷつっと小さいポリープがある」と言われ、別の病院で細胞サンプルを取って検査をしたら「甲状腺がん」と診断されました。

 甲状腺がんの中の乳頭がんというものでした。最もポピュラーなタイプですが、リンパ節転移を起こしやすいといわれていて、一般的な治療は切除手術です。でも、もし声が出なくなったら死活問題なので、何とか切らない方向で治したいとフォースオピニオンまで聞きました。そして、ピンポイントでがんを叩く照射治療と抗がん剤治療を選択したのです。

 その治療や抗がん剤がまだ認可されていなかったので、個人で加入していた医療保険でも何だかんだと理由がついて保険が下りず、結局、ほとんど自己負担になりました。

 加えて抗がん剤のつらさは大変なものでした。通院治療でしたが、つら過ぎて起きられない日が何日もありました。トイレに立つのもしんどいから尿意も起こらないくらい……。のどには何か詰まっているような感じがするし、髪は抜け、眉毛もなくなりました。躁鬱状態で、ひどい時は「死にたい」と思い、調子がいいと「もう飲んじゃえ!」と大酒を飲んだり……。抗がん剤が心も体も弱くして、合併症で死んでしまう人もいると聞きます。だから、日本では無認可の100万円以上する新薬や、科学的根拠のない治療にだって頼りたくなる人がいるのも理解できます。

 仕事は3年間ほぼできませんでした。3歳のデビューから仕事を休んだことはありませんでしたが、抗がん剤治療中にラジオのお仕事にどうしても行けなくて、ドタキャンしたのを機に、オファーを受けるのをやめました。自分の劇団だけは辛うじて続けましたが、収入などないに等しい状態で、貯蓄だけで生活していました。

■ダイエットによさそうな食材が「最悪」の場合も

 今は、定期的に人間ドックと甲状腺機能低下症を悪化させないための治療と副腎皮質ホルモンの注射を続けていますが、基本は食事療法です。

「とにかく自然治癒力を上げることが大事」という医師の指導を受けています。

 主食を玄米やもち麦にして、肉なら赤身、野菜なら緑や赤の色の濃いものを軸に、ショウガなど体を温める食材を取ることを心掛けています。大量に飲んでいたお酒やたばこは基本的にはやめました。我慢し過ぎてストレスになるのは、それこそ病気のもとなので、少し緩めですけど(笑い)。

 私が今一番言いたいのは、「ダイエットしようと思ったら、まず甲状腺もですが自分の体の状態を知るため診察を受けたほうがいい」ということ。ダイエットによさそうな食材が甲状腺の病気には最悪だったりするんです。

 あと、「30歳を過ぎたら病気のことは大げさに考えたほうがいい」。自己診断はせず、早めに病院に行くことをお勧めします。また「日頃からお金の無駄遣いはしない」ことも大切かな。がんになったら保険を使えるとしても何かと大変です。いざというときのためにお金はあるに越したことはないですよ。

▽さいとう・こずえ 1967年、東京都生まれ。3歳で子役デビューし、テレビ、映画、CMなどで活躍する。高校卒業後は米国に留学。米国人実業家と結婚したが、2000年に家族の介護のため帰国し、その後、離婚した。05年に劇団を立ち上げ、最近は歌手と声優を主軸に活躍。子役声優の養成所「YOUボイス・アクターズスタジオ」の講師も務めている。

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