末期がんからの生還者たち

肺がん<2>「一緒に健康診断を」友人の誘いが救いになった

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「早期発見、早期治療」はがん撲滅への原点である。しかし、がんが発見されるまで各種精密検査に多くの時間を費やし、検査費用もバカにならない。そうしたリスクを嫌い、大半の健常者はがん発見に後れを取ってしまう。

 その点、主婦の橋本好恵さん(73歳、仮名)は、検査時間はわずか1時間、しかも検査代金ゼロ円で「肺がん」が発見された。

 昨年暮れ、東京・荒川区内の公営住宅に住む橋本さんは、階下に住む親しい友人からこう声をかけられた。

「ね、明日、一緒に区がやっている健康診査に行かない?」

 毎年、全国の地方自治体はほぼ無料の特定健康診査を施行している。荒川区も毎年、40~74歳を対象に「特定健康診査受診票」を送付し、診査医院は区が指定した100を超える医療機関から選べるようにしている。橋本さんも3カ月前に申し込みをしていたが、明日が健診日であることを忘れていた。

 橋本さんは身長156センチ、体重65キロと少し肥満気味だが、座骨神経痛以外にこれまで病院の世話になった経験がない。

「何十年とどこも悪いところがないし、3食とも食事はおいしい。ただ、年金生活者で地味な生活を送ってきましたから栄養に偏りがないかが心配でした」

■「肺がん」という病名は浮かばず

 当日は検査のために朝食を抜いて、友人と2人で自宅から徒歩10分というクリニックを訪ねた。問診、身体測定、血圧、尿、心電図、胸部X線検査など1時間ほどの簡単な受診で帰宅。1週間後、検査結果を聞きに再びクリニックを訪ねると、院長がX線の画像を見ながらこう言った。

「肺に気になる影が見えます。総合病院を紹介しますから、精密検査を受けてくださいね」

 肺に影――。そう告げられても、橋本さんの頭の中には「肺がん」という病名はまったく浮かんでいなかった。

 2017年もあと数日で終わろうとしている12月末、長女と一緒に自宅から歩いて十数分という総合病院を訪ねた。再び血液検査、CT、MRI検査などを受診し、結果が出るまで気持ちが落ち着かない不穏な1週間を過ごした。

 今度は夫が病院に付き添い、診察室を訪ねると、担当医師からこう告知される。

「肺がんがステージⅢまで進行しています。肺の所々に腫瘍が散らばっており、手術は難しいと思います。治療は『国立がん研究センター』を紹介しましょう」

「日本対がん協会」の統計(2015年)によると、肺がんの検診に335万人が受診し、そのうち肺がんの発見は1559人。発見率はわずか0.05%に過ぎない。

 しかし橋本さんは、友人の誘いで無料の胸部X線検査を1回受診しただけで、肺がんを発見することができた。

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