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認知症で低栄養に 患者が食べられない理由はさまざまある

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 認知症になると、低栄養になりやすくなります。食事の摂取量が減りやすいからです。

 アメリカ栄養士会とアメリカ静脈経腸栄養学会による低栄養の3つの原因分類で見ると、認知症による低栄養の多くは「社会生活環境に関連した低栄養」に該当します。炎症はないが、なんらかの理由で食べられない状態で、患者さんのエネルギー・タンパク質の摂取量を高めることが主な治療になります。

 しかし、認知症で低栄養の方は、対策がなかなか難しいです。

 嚥下(えんげ)機能が低下しているのであれば、喉を鍛えるリハビリが役に立ちます。ところが認知症の患者さんでは、それ以外の理由で食べられないことが多く、鍛えることも難しいです。

 認知症が進行した場合、言語でのコミュニケーションが難しくなります。そのため、本人が何を問題と感じ食べられなくなっているのか、原因を見極めなければなりません。

 ある方は、白い食器に白い食べ物がのっていることで、食べ物を認識できないことが理由でした。またある方は、認知症の症状で「食べ方」を忘れてしまい、食べられずにいました。集中力低下のために、食べ続けられない方もいます。病院で出している食事が口に合わない、あるいは嫌いな食材が多いために、食が進まない方もいます。

 高齢になると便秘になりやすくなりますが、この便秘が原因で食べない方も珍しくありません。口腔内の環境がよくないために食欲不振に陥っているケースも、高齢者ではよく見られます。

 食事場面を注意深く観察し、いろいろ試していく中で、「これだ」というものを探していくしかありません。食器を変える、手づかみで食べられる食事メニューにする、便秘や口腔内環境の不具合を改善するなどです。

 ご家族からの情報も貴重です。食の好みや普段の食事時間などです。自宅で使っていた食器・食具に変えることで食事量が増えた、という認知症の方もいます。

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

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