末期がんからの生還者たち

胆管がん<1>母親の慟哭に、耐えていた感情があふれ出し…

西口洋平さん(提供写真)

 次いで妻に電話を入れた。母親に動揺を与えてしまったことに少し反省し、淡々と経過を説明した。問題は、幼稚園の卒園式に加えて、小学校の入学式が迫っていた一人娘である。

「入院をどのように伝えようか、これは自宅に帰って妻と相談しようと思いました」

 もうひとつの問題は、勤務先の会社である。大学卒業後の2002年、創立間もないベンチャー企業に入社した。

 入社1年目で社長賞を授与されるほどに仕事は順調である。社員たちの信頼も厚い。

 ただ、がんの告知は社内で大げさにならないように、所属するチームだけを相手に、出来るだけ明るい声で説明した。最後にこう付け加えた。

「仕事の都合で帰社時間が遅くなるとか、体調の悪い日もあるかもしれません。そのときは、ちょっとした思いやりをください」

 がんの告知は仲の良かったサッカー仲間たちにも話し、西口さんの過酷ながん闘病がスタートする。

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