がんと向き合い生きていく

3度目のがんが見つかった患者さんから届いた「3つのやりたいこと」

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 3つ目のやりたいことを見たとき、私は「ピアサポート」という言葉が勝手に頭に浮かびました。がん経験者が、がん患者の相談を受ける活動です。もし、Fさんが相談役であれば、あなたのたくさんの経験から、今がんで悩んでいる患者さんがとても勇気づけられることは間違いありません。誰よりも理解してもらえることで、どれほど助けられるでしょう。

 長年にわたって病気と闘って、闘って、何回も落ち込んで、復活して……。Fさんが話す言葉は必ず患者の心に響きます。もしかしたら、これは神様がFさんに与えた天命なのかもしれません。医師や看護師にはとてもできないことです。

 ハーバード大学でポジティブ心理学を教えているタル・ベン・シャハー博士は、著書の中で「ポジティブに生きるには『自分で、自分を優しくする』ことが大切!」と言っています。例えば、電車で老人に席を譲ったら「ありがとう」と言われた。その時の老人の笑顔を覚えておいて、夜寝るときに思い出す。それで幸せな気持ちになれる=自分を優しくすることになるのだと思います。

 ボランティアをして、「ありがとう」と言われたら、それを後で思い出すのです。自分が他人に役立っているだけでなく、その時を思い出すことで、自分の心も幸せになれるのです。

 Fさん、これからもずっと応援しています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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