西口さんは診察室で担当医師から、今後の治療について説明を受けた。手術の後に抗がん剤治療というスケジュールだが、「難しい手術ですから、おそらくは12時間くらいかかるでしょう」と、予告された。
妻や両親に見送られて手術室に入った。家族は、12時間の手術時間を考慮し、いったん自宅に戻った。ところが、すぐに病院から呼び出しを受けたという。開腹すると、胆管がんは腹膜やリンパ腺にも転移しており、手がつけられない。開いた腹部はすぐに閉じられたのだ。
西口さんが、わずか2時間の手術を知ったのは術後3日目である。病期は末期の「ステージⅣ」だった。
「担当医師から説明を受けたとき、“ああ、私はこれで終わったな”と、覚悟しましたね」
末期がんからの生還者たち