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俳優・大杉漣さんの死を招いた急性心不全の意外な前兆

急逝の大杉蓮さんは66歳だった
急逝の大杉蓮さんは66歳だった(C)日刊ゲンダイ

急性心不全について教えてください。俳優の大杉漣さんは腹痛を訴えたそうですが、腹痛が前兆になることはあるのでしょうか? よく腹痛を起こすので気になっています。肥満で喫煙者。健診でコレステロールが高いと指摘されましたが、その後の検査は受けていません。 (50代男性)

 心不全は「病気」ではなく「病態」です。あらゆる心臓病が最終的にたどり着く終末像のひとつです。何らかの原因で心臓のポンプ機能が急激に低下。全身への血流が滞って肺にうっ血が起こり、呼吸困難などの症状が出ると、急性心不全(状態)と診断されます。

 心不全の原因のうち、多いのが冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)です。狭心症の典型的な症状は、胸の圧迫感、胸痛、胸を締め付けられるような苦しさ、左上腕・奥歯の痛み、左肩の凝りなど。階段を駆け上がったり、速足で歩いた時や、食後、喫煙中によく見られます。就寝中に起こるものもあります。

 症状は数分~15分以内で消えますが、頻繁に起こるなら循環器内科を受診すべき。中でもこれまでなかった症状であればすぐに病院へ。不安定狭心症といって、3人に1人が心筋梗塞を起こす状態といわれています。

 上記の症状が15分以上続いたら、心不全の中でも特に多数を占める心筋梗塞を発症してしまった可能性があります。しかし、高齢者や糖尿病の人では症状がない、または軽く、腹痛として感じることは珍しくありません。

 前兆について話してきましたが、実は心筋梗塞や心臓突然死を起こした人の6割が「初発症状」として発症。患者さんやご家族にとっては、“何の前触れもなく”となるでしょう。

 しかし、冠動脈疾患はリスク要因が分かっている病気。喫煙習慣、肥満、運動不足、高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、歯周病などを抱えている人は、それらの改善をぜひ行うべきです。相談者の場合、心臓の状態を一度も調べていないなら、虚血性心疾患の疑いがないか調べることをおすすめします。

(欅坂上医科歯科クリニック/榊原記念病院・伊東春樹医師)