心筋梗塞や脳卒中リスクが増加 「三寒四温」は命が危ない

急に冷え込むと血管に負担がかかる
急に冷え込むと血管に負担がかかる(C)日刊ゲンダイ

 厳しい寒さもようやく一段落して、暖かい日も増えてきた。とはいえ、夜になると冷え込んだり、急に寒さがぶり返す日もまだまだ多い。そんな「三寒四温」の季節は命の危険がある。

「今日は患者が増えそうだ」

 ポカポカ陽気が続いた後で一気に寒さが戻った日は、循環器の医師は心の準備を整えるという。激しい寒暖差によって、心筋梗塞、狭心症、大動脈解離、不整脈といった心血管疾患が発症しやすくなるからだ。先日、66歳の若さで急逝した俳優の大杉漣さんも急性心不全だった。

 恒温動物である人間は、生命を維持するために気温が高い時は放熱、低い時は加熱と保温を行って体温を一定に保っている。暑くなると血管を広げて血流を増やして熱を逃がし、寒くなると血管を収縮させて血流を減らして熱を逃がさないようにする。

 そのため、気温が高くなると血圧は下がり、低くなると血圧が上がる。この血圧の上下動が急激に起こると、血管や心臓に大きな負担がかかってしまうのだ。

 東邦大学医学部名誉教授で平成横浜病院健診センター長の東丸貴信医師が言う。

「前日に比べて気温が5度以上も上下動する日は注意が必要です。とりわけ、暖かい日が続いてから急に寒くなった時が危険です。欧州心臓病学会では、最低気温が10度低下すると心筋梗塞の発症が7%増加すると報告されています。別の研究でも5度低下すると15日間で5・7%の増加が認められています。一般的に、気温が低い時は交感神経が活性化してアドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンが放出され、血管が収縮して血圧も上昇します。暖かい日が2、3日続くと、副交感神経が活性化して体がその環境に慣れてきます。そんな状態から一気に5度以上も気温が下がると、血圧が急激に上昇したり、心拍数が増加して、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントで突然死するリスクが高まるのです」

■いきなり激しい運動をすることも控えるべき

 また、気温が低いと代謝を活発にして体温を上げるためにアドレナリンも過剰に分泌される。それによって血液が固まりやすくなり、血栓による心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクがアップすることもわかっている。急に寒くなった日は命が危ないのだ。

 とくに高齢者は、ただでさえ生活習慣病や加齢によって冠動脈や脳動脈の動脈硬化が進んでいる。

 気温の低下によって収縮期血圧が一気に20~30㎜Hgも上がる人も珍しくないというから、血管が負担に対応できずに心血管イベントを招く危険がさらに上がる。よりいっそう気を付けたい。

 また、日々の寒暖差によって血圧が中等度高血圧の範囲(収縮期160㎜Hg以上、拡張期100㎜Hg以上)を超えて上下動を繰り返していると、動脈の内壁が傷つけられて動脈硬化が進み、さらに血圧の上下動が大きくなっていく。そうした“負の連鎖”が心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクがアップすることもわかってきた。やはり、三寒四温の時期は要注意といえる。

「これから3月にかけては、暖かい日が続いたとしても気を緩めないことが大切です。冬物をしまい込んでずっと薄着で過ごしたり、暖房を完全に切って室温を適度にコントロールすることをやめてしまうのはまだ様子を見てください。急に激しい運動をすることも控えましょう。ヒートショックを防ぐために入浴前に浴室や脱衣所を暖めたり、熱い湯船につかったときはゆっくり時間をかけて出るといった対策も続けたほうがいい」

 厚労省の統計によると、心臓疾患による死亡数が最も多いのは1~3月にかけてである。三寒四温の季節は、ポカポカ陽気が続いても気を抜いてはいけない。

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