役に立つオモシロ医学論文

災害時の死亡リスクに影響する「人とのつながり」

津波に飲まれた町で立ち尽くす人(C)日刊ゲンダイ

 2011年に発生した東日本大震災では、地震発生から津波が到達するまで1時間もあったにもかかわらず、多くの方が津波で亡くなりました。

 震災の津波による死亡者が、どのような背景を持った人たちが多かったのかを検討した研究論文が「サイエンティフィック・リポーツ」という科学誌に2017年11月29日付で掲載されました。

 この研究は、津波により浸水した宮城県岩沼市玉浦地区在住の高齢者860人を対象としたもので、震災当日、震災から約3年間における死亡者の特徴を分析しています。なお、結果に影響を与えうる性別や年齢、海岸線からの距離などの因子で統計的に補正を行い解析をしています。

 震災当日に津波で死亡したのは33人、3年間の追跡調査期間中に死亡したのは95人でした。解析の結果、震災当日では、以前よりうつ病を患っていた人で死亡リスクが3・9倍高いことが示されました。また統計学的には有意ではないものの、家族や友人との交流があった社会的つながりの強い人で、死亡リスクが高い傾向にありました。他方、震災後3年間の追跡調査においては、友人と交流があった人で死亡リスクが46%低いという結果になっています。

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青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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