「完全な不動線毛や微弱な線毛運動、協調性のない線毛運動などさまざまな症状が起きます。共通するのは、幼少期から慢性の気道感染症に悩まされていることです」
PCDの患者の約半分は、左にあるべき心臓が右になったり、臓器の配列が乱れたりする。内臓逆位だ。胎児の初期段階でノード線毛が正しく動かず、タンパク質をコードする遺伝子を狂わせて臓器の発生の順番などが乱れることで起きる。
「気管支拡張症、副鼻腔炎、内臓逆位を特徴とするカルタゲナー症候群は、内臓逆位を伴うPCDといわれています」
妊娠初期の飲酒も関係するとの疑いもあるが、ハッキリしたことはわかっていない。
線毛症は、喫煙、慢性気管支炎、インフルエンザウイルスを含むウイルス感染症が引き金となる場合もある。
「PCDでも60歳手前まで気付かない人もいます。粘液線毛機能を調べる検査はサッカリン法、アイソトープを使った方法で、形態的検査として電子顕微鏡を用いた検査があります。PCDの診断には遺伝子検査が必要です。ただ、いずれも日本では一般的には行われず、普及が望まれます」
ちなみに、線毛運動には適度の湿り気が必要となる。加湿器やマスクで鼻を覆うことは、その助けになる。覚えておこう。