あなたの知らない突然死の現場

大杉漣さんはホテルで発作 突然死で危険な生活シーンは?

心不全で亡くなった大杉漣さん
心不全で亡くなった大杉漣さん(C)日刊ゲンダイ

 いまだに信じられない。先月21日、ドラマの撮影先の千葉で心不全で亡くなった俳優・大杉漣さん(66)のことだ。あまりにも突然過ぎる最期に、ファンならずともショックだろう。

 20日は午後9時ごろに撮影を終え、ホテルに戻って共演者らと食事をしてから自分の部屋に戻ると、腹痛を訴えたが、撮影中も食事のときも変わった様子は全くなかったという。翌21日午前3時53分、帰らぬ人となった。発症からわずか7時間あまりの悲劇だ。

 突然死を起こす原因は、心臓が6割で、そのうち心筋梗塞に代表される虚血性心疾患が8割と圧倒的だ。残り4割のうちおよそ半分は脳出血やクモ膜下出血などの脳卒中で、残りは肺や消化器系の病気。大杉さんは心臓だった。東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌医師が言う。

「心筋梗塞で関連痛(震源地とは違う場所の痛み)として腹痛を伴うことはありますが、激しい腹痛は腹部大動脈の異常が一般的。たとえば、大動脈瘤の破裂で心不全を起こすこともあります」

■運動中より就寝中が危ない

 大杉さんの発作は仕事の直後で、サラリーマンなら職場近くで一杯やって電車で帰る途中の急変といってもいいかもしれない。都内の突然死1万8189件を調べた調査によると、大杉さんのような休息中は8.2%で、食事を含む飲酒中は3.4%、乗車中は1.4%だ。突然死の発作を起こす状況としてはそう多くない。ダントツが意外にも就寝中で、3割を超えている。

 生活シーンを「睡眠」「食事」「排便」「入浴」「スポーツ」「行事」「歩行」「休息」の8つに分けて、突然死の危険率を分析すると、60歳以上の場合、最も危ないのは「入浴」で、危険率は18・3ポイント。これに「排便」が15.5で続く。

 危険率は1時間に1億人のうちどれくらい突然死を起こすかを表す。ざっくりと、日本のどこかで1時間に突然死する人数だ。「歩行」は2.0、リスクとしては「入浴」と「排便」が突出しているのだ。

「高齢者は、血管が硬くなって若い人より血圧が乱高下しやすい。上がるのも下がるのも急激なのです。排便はいきんで血圧を上昇させ、血管を破る要因になり、入浴は血圧を下げて血管を詰まらせたり意識を失わせたりします」(桑島医師)

 睡眠の状態がよくないのも、血圧の急降下によるという。運動や作業などの影響で致死的な発作を起こすイメージがあるかもしれないが、それは60歳未満の若い人。高齢者はトイレや風呂場などの落ち着く場所が危ないのだ。

「浴室は風呂を沸かしてから室内を湯気で暖めるだけでなく、脱衣場も暖房で暖めておくことです。寒暖差を少なくすれば、突然死のリスクは少なくなります。また、スムーズに排便できるように野菜中心の食事を心がけ、3食きちんと取ることも大切です」(米山公啓医師)

 夏は脱水症状にも注意した方がいい。〈表〉は2人の医師のアドバイスをもとにした突然死に関わるチェックリストだ。どれも「いいえ」がよくない。多い人は、生活を見直すことだ。

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