年をとったら「太る」を目指す

嚥下障害があればサルコペニアのチェックが必要

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 サルコペニアは、加齢、低活動、低栄養、疾患によって筋肉量が減少し、全身の筋力や身体機能の低下が起こることです。

 以前この欄で、嚥下(えんげ)障害のある患者さんには、しばしばサルコペニアがみられるという話をしました。喉にも筋力低下が起こり、「ゴックン」という食物ののみ込みをうまくできなくなるのが原因です。

「サルコペニアによる嚥下障害」はまだあまり知られていません。隠れ脳梗塞や感覚障害などサルコペニア以外の病気が原因だと指摘する医師もいます。

 しかし、もしサルコペニアが関係していたら、それを改善しなければ嚥下障害も改善しません。食べられないのですから、サルコペニアも進みやすく、悪循環となります。嚥下障害があれば、サルコペニアのチェックが必要です。

 サルコペニアの時にリスクが高まるのは、骨粗しょう症です。サルコペニアと骨粗しょう症は“どっちが先に起こるか”がいえないほど、相互関係にあります。「骨粗しょう症で骨折を起こし、寝たきりになる」とよくいわれます。

 一方、サルコペニアで寝たきりになると、骨に衝撃が加わらなくなるので骨のスカスカ(骨粗しょう症)が一層進みます。

 骨粗しょう症による骨折のうち、大腿骨近位部骨折(下肢の骨折)は基本的に入院や手術が必要です。しかし、転んで手をついた時に起こす橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)など上肢の骨折では手術しなければ基本的に入院は不要です。入院してベッド上のみの生活となると、入院のせいでサルコペニアが進行してしまいます。

 なお、寝たきりが骨粗しょう症を進行させるのは、日光を浴びなくなるのも関係しています。日光はビタミンDの体内での合成を促し、骨を強くする働きがあるからです。

若林秀隆

若林秀隆

リハ栄養、サルコペニア、摂食嚥下障害を特に専門とする。日本リハビリテーション医学会指導医・専門医。

関連記事