がんと向き合い生きていく

がん患者は孤独だからこそ“先輩”として心のケアの役に立ちたい

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Fさんは17歳で白血病になって、結婚するまでの10年間は自分が白血病であることを知らずに過ごしたといいます。現在は、がんの場合、すぐに本人に告知されます。告知されてから治療に至るまで、たくさんのことを自分で決めていく必要があります。だからこそ、Fさんはがん患者の心のケアの役に立ちたいと考えたのでしょう。

「患者は落ち込んで泣いている暇はありません。医療の進歩とともに、心の受け入れも求められているように感じています。私は先生方や看護師さんに恵まれました。本当に本当にありがとうございます。不安は尽きませんが、人生一度きり。密度の濃い人生を歩むことができています」

 患者同士が助け合う「がん患者会」はたくさんあります。中でも「ピアカンファレンス」は、先輩がん患者が今がんで不安を抱いている患者の悩みを聞いたり、アドバイスを送ります。患者は、手術、放射線、化学療法などについての経験談を聞くことができます。医師や看護師から聞くのと、実際に治療を受けた患者から聞くのでは、立場だけでなく“実感”が違うのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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