あなたの知らない突然死の現場

ゴルフで突然死 相対危険率はなんとランニングの8倍も

運動量の少ないゲートボール
運動量の少ないゲートボール(C)PIXTA

 タレントの松村邦洋(50)が心肺停止の状態になったのは、2009年の東京マラソンだった。スタートから15キロ地点に差し掛かるところで急性心筋梗塞を発症、AED(自動体外式除細動器)を使った緊急処置で一命を取り留めている。

 当時はでっぷりとした体格でマラソンは負荷が大きすぎると思われたが、本人は事前にトレーニングを積んでいてコンディションも悪くなかったという。

 もっともマラソンは、必ずしも突然死をしやすいスポーツというわけではない。少し古いデータになるが、東京都監察医務院が1984~88年にかけてスポーツ中の突然死について調べたところ、60歳以上で最も多かったのは、死亡者44人のゲートボールだった。2位は40人のゴルフで、ランニングは18人の3位となっている。

 一方で、ランニングを1としたときの相対危険率を見ると、ゲートボールは1.6で、ゴルフはなんと7.9。中高年にとっては止まってボールを打つ方が、走るよりも死亡のリスクが高いのだ。

 寺田病院名誉院長で、日本循環器学会認定循環器専門医の澤井廣量氏が言う。

「スポーツ中の急死は、心室性の細動が原因であることが多いですね。心室は、大動脈に血液を送り出すところ。そこが突然、重度の不整脈などによっておかしくなり、血液を送る機能が正常に働かなくなってしまうのです。不整脈を引き起こすのは、急激なストレスによるドキドキ。ゴルフで亡くなる人が多いのは、ティーアップして構えたときやパッティングのときに“失敗するのではないか”“外したくない”とドキドキするからです。ゲートボールも、狙いを定めて打つときに緊張するもの。運動量は少なくても危険はあるのです」

■運動量の少ないゲートボールも心臓にストレス

 ゴルフの場合は、寝不足や前夜の酒が残った状態でラウンドすることもめずらしくない。これも心臓にとってはストレスだ。賭けゴルフも、法律的な問題は別にして、オススメできない。

 高血圧や糖尿病の持病はもちろん、尿酸値が高いこともリスクファクターといわれている。少なくとも、日頃からまったく運動をしていない人が久しぶりにゴルフをするときは、練習場でボールを打ったり、準備体操で体を動かしたりしてからティーインググラウンドに立つようにした方が賢明だ。

 すでにジョギングやウオーキングをしている人は、運動中の脈拍チェックも忘れずに。

「1分間で120回以上になると危険です。100回ぐらいにとどまるようにコントロールしましょう。脈拍は15秒間ぶんを4倍して割り出します。これなら運動中でも数えやすい。安全の目安は、15秒で25回程度になります。また、冬は寒さで血管が収縮しやすいですし、夏は脱水症状で血が濃くなって梗塞を起こしやすい。季節的な要因を頭に入れて対策を考えることも重要ですね」(澤井廣量氏)

 健康のためにやる運動で命を落としては元も子もない。

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