健康格差は年収格差

足立区vs港区 足立区は所得が低いが平均寿命は延びている

足立区の平均寿命は着実に延びている
足立区の平均寿命は着実に延びている(C)日刊ゲンダイ

 港区の平均年収は、景気の動向に応じて激しく変動し、足立区の平均年収は緩やかな動きを示しています。では、平均寿命はどうでしょうか。両区の人口構成が大きく違っているため、あくまでも参考結果にすぎませんが、試しに比較してみましょう。

 市区町村別の平均寿命は、2010年のほかに、00年と05年の数字も公表されています。それらをまとめて<表>にしました。

 まず男性。00年には1.3歳だった差が、05年には2.4歳に広がりました。05年はITバブルのど真ん中で、港区の平均年収は一本調子に増え続けていた時期です。一般に年収が多いほど、人間ドックなどの受診率が上がり、スポーツジムや鍼・マッサージなどに通う人が増えます。また食事に気を使い、野菜やサプリメントの購買量が増える傾向があります。この時期、港区の平均寿命が延びたのは、それらが一因だったかもしれません。

 ところが10年になると、寿命が若干下がってしまいました。リーマン・ショック(08年)やバブル崩壊の影響で、年収も大きく減少しています。それがもとで、精神的なストレスを抱え、健康を損ねてしまった住民が多かったということでしょうか。

■景気に左右される港区

 一方の足立区は、ゆっくりと、しかし着実に寿命を延ばしています。05年には港区にいったん引き離されたものの、10年には差を縮めています。この間、足立区の平均年収は経済動向に影響されることなく、緩やかな減少にとどまっています。

 女性の平均寿命も、男性ほどではないですが、ほぼ同じ傾向を示しています。00年には差がちょうど1歳でしたが、05年には1.4歳に拡大。しかし10年になると1.1歳に縮まりました。

 まとめると、次のようになります。

①港区は平均年収、平均寿命とも、景気変動の影響を受けやすい。
②男性は女性よりも景気変動の影響を受けやすい。
③足立区の平均年収は景気の影響を受けにくく、男女とも着実に寿命を延ばしている。

 港区民の平均寿命は景気に左右されるという事実と、平均年収が最低の足立区で男女問わず平均寿命が着実に延びているという事実を、我々はしっかり受け止めるべきでしょう。しかもこうした傾向は、他の区にも見られるのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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