あなたの知らない突然死の現場

星野源は九死に一生…「致死率50%」の脳卒中を予防する

星野源さん(左)と長嶋茂雄さん
星野源さん(左)と長嶋茂雄さん(C)日刊ゲンダイ

 急に目の前がぐにゃっと曲がり、バットで頭を殴られたような痛みとともに立っていられなくなり……。

 くも膜下出血を発症したときの様子を自らのエッセー集でこう振り返っているのは、俳優の星野源(37)だ。

 幸い命に別条はなかったが、家族には「後遺症も含めて、全快の可能性は低い」と説明されていたというから、病状の深刻さがうかがえるだろう。

 くも膜下出血といえば突然死を起こす主因のひとつ。星野は6年前の12月に31歳の若さで苦しんでいる。「なぜ、この若さで?」と驚いた人も多かっただろう。東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌医師(循環器内科)が言う。

「一般に、くも膜下出血は50代から60代が発症のピークです。年齢を重ねて高血圧や喫煙、飲酒などの影響で動脈硬化が進むと、こぶができて、やがて破裂するイメージ。20代から40代の若い方が発症する場合は、こぶができやすい血管の奇形が認められるケースが多いですね」

■くも膜下出血は年代で発症後に違い

 国立循環器病研究センターのデータによると、血管奇形を持つ人の受診時の状態は、出血が48%とトップだが、36%が無症候で、13%はけいれんだった。2人に1人は、破裂する前に受診できている。

「けいれんの症状で精密検査を受けたり、たまたま脳ドックを受診して血管の奇形が見つかると、未破裂での受診につながります」

 発症すると50%は命を落とすくも膜下出血は、若年性と高齢者のケースで、その後に違いがあるという。

「60歳以下は、手術後5年たっても8割が自立していますが、70歳以上で5年後に自立しているのは38%で、42%が亡くなり、残りの20%は要介護状態です」

 厄介なくも膜下出血をうまく切り抜けるには、若さがひとつのキーワードになる。若年性と高齢者の発症をそれぞれ未然に防ぐには、「20歳と50歳で脳ドックを受けること」だ。それで未破裂のこぶが見つかったら、こぶを塞ぐ治療で破裂は予防できる。

 脳卒中の中でもうひとつ怖いのが、あるタイプの脳梗塞。心原性脳塞栓と呼ばれるタイプで、巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄(82)は14年前、サッカー元日本代表監督のオシム(76)は11年前に発症したことで知られる。

「一般に脳梗塞は、脳の血管でできた血栓が悪さをしますが、心原性脳塞栓は心臓でできた血栓が脳に流れて発症します。心原性はより太い血管を詰まらせるので、一般の脳梗塞より重症化しやすいのです」

 福岡県久山町の研究では、死亡を含む重症例は一般の脳梗塞が18~37%だったが、心原性脳塞栓は52%に上った。しかも血栓を溶かす治療の適用となったのは、わずか11%と少なかったのだ。長嶋やオシムは一命を取り留めたが、必ずしも助かるとは限らない怖さがあるだろう。

「ただし、心原性脳塞栓は、不整脈がベースにあります。不整脈を薬や手術で治療し、血栓ができにくくなる抗凝固薬を服用すれば、予防できます」

 3人のように万が一のピンチを免れるには、予防が一番。今回のチェックリストは、「はい」が多いほど危ない。リストを参考に予防した方がいいだろう。

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